うつ病物語 その124「うつ病になっても人格が変わるわけではない」

うつ病になっても「人格」が変わるわけではない

前回の「うつ病物語 その123」で、うつ病になると別人のようになるとは言っても、その人の人格が変わったり、文字通り”別の人”になってしまうわけでない。

その人本来が持っていたはずの和やかな表情が消え、冗談などの軽口を言わなくなり、行動力が消失し、硬い殻で覆われたような、家に居ても、ただゴロっと横になっているだけのような物体になってしまうことを想像してもらうといいだろう。

いわば、その人を形作っていた人間味というか、魅力のようなものが無くなってしまうのだ。これは、その人との関係が深ければ深いほど驚きは大きい。ましてや配偶者なら、かつての姿とかけ離れた状態を目にする度に、強烈なショックとして重く圧し掛かってくるだろう。

また、このような酷い状態は、一番リラックスする場所である自分の家に居る時に顕著に出る。例えば、関係は深くても、そんなにしょっちゅう会う相手ではない両親や兄弟、または友人などと外で会っている時であれば、うつ病患者なりに無意識に頑張る意識が働くので、「あれ?何か元気がないな、こんなに反応が乏しい人だったかな?ちょっと悩みでも抱えているのかな?」くらいで済む状態でとどまることが多い。

しかし、その後は、無意識に頑張ってしまった反動が大きく出る。自室に閉じ籠ったり、一人になりたくなって外に出て車の中でボーっとしたり、全てに無気力になり、数日寝込んでしまったりするのだ。

どうしてこんな病気が存在するんだ!

誰にでも往々にしてある「気分の落ち込み」や「一時的なうつ状態」と、本物の「うつ病」との大きな違いがここにある。その落ち込んでいる状態そのものには、大きな違いを見出すのは難しいが、それが長期間に渡って続くとか、楽しいことがあっても気が晴れないとか、以前とは何かが違う、という妙な違和感を自覚するのなら、「うつ病」を疑った方がいい。

元々はお気楽な性格だと自分で思っていたし、周囲にもそう見られていた私自身が、うつ病の診断をされた時には、「え?まさか俺が?…イヤイヤ、これは本物の”うつ病”とは違うやつでしょ?」と、うつ病である自分を受け入れるのに相当な期間が掛かった。

受け入れるのに時間がかかる上に、ピシャッとした治療法もなく、他人に説明することも、また理解してもらうことも困難で、堂々と人に言うことも憚られる病気。医者はカウンセリングか投薬しかすることが出来ず、看病をする側もされる側もどうしていいか分からず、見舞いにも行けない。

こんなにやっかいな病気を、私は他に知らない。

 

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