うつ病物語 その171「どんな相手でも、どのような場面でも、”敬意”を持って接する」

役員面談…何をどうやって話そうか?

ハラスメント講習から2週間が過ぎた頃、管理職に対する役員面接を実施するとの通知が来た。これは年に2度実施するもので、この時期に行うものは中間面接と位置付けられている。

今の私は、うつ病発症時の部署(総務部)に居た頃に比べて、遥かに役員達に対する気負いが無くなっているが、それでも、目の前の仕事を片付けるのに追われ続けている状況で、自分が掲げた目標に対して具体的に何を行ったのか、成果は何か?この後は何をするつもりなのか?というようなことを、役員勢揃いの5対1で話さなければならない面接は気苦労のひとつだった。

まあ、まだ時間はあるし…なんて思っていたら、あっという間に面接前日になってしまい、頭の整理を進める。

うつ病明けの私が新天地で思った”やりたいこと”とは

休職明けの異動から1年5ヶ月になり、現職場である工場管理の仕事にも心身が馴染んできたが、異動してきた私が新天地で数か月過ごすうちに肌で感じ、一番エネルギーを注いできたのは、職場の”満足度”を上げることだった。

満足度を上げるには、一般的には、「職場環境の向上」や「風通しの良い職場作り」が目標となり、そのためには「コミュニケーション活動が重要」となっていくことが多いが、私は、このノリがあまり好きではない。

…というか、この方法は王道だし正しくもあるが、どうしても推進者側からの上から目線の動きになりがちで、これまでの経験上、期待したほどの反応は得られず、それなりの成果が出るのが精々で、推進担当者が疲れてしまうのに比例して自然消滅的にポシャることが多い。

しかし私は、生産現場の最前線、最下層からのリスタートを切っていたので、送迎バスで出勤する従業員や下請けに短期派遣の人達、10~20歳も下の社員達と同列で仕事をしながら教えを乞う日々だった。

最初は、リハビリ期間ということで、ただただ黙々とやりながら気楽に過ごしたが、段々と、彼ら彼女らが会社に対して何を不満を感じているのか?どんな気持ちで毎日出勤してくるのか?どういう管理者を求めているのか?…といった、奥底の本音を知って先々に繋げたいという気持ちが強くなり、以降は自分の注意力の大半をそれに費やした。

管理者側(特に経営側)がとっくの昔に忘れてしまった”現場のリアル”を掴むには、またと無いチャンス、同じ階層に居るからこそ聞こえてくる声がある。私は、そういうボヤキやクレーム手前の声を聞くために、目的の人が居そうな時を見計らって休憩室に行ったり、例えどんな話であっても身を乗り出して聞く姿勢を心掛けた。

こういう方面に意識が強く向いたのは、私が「パワハラ」で「うつ病」になった経験があることと無関係ではなかった。収益が計算できる事業がなければ職場も会社も成り立たないが、それを具現化するのは「人」であり、人を大事にしない会社は長生き出来ない…、というのが私の結論だった。

もう「上司」や「役員」のことを「偉い人」や「上の人」などと表現する職場風土ではダメなのだ。役職はただの役割分担で、その役割に真摯に励んでいる人は、平社員だろうと下請けだろうと、皆、尊敬に値する。

そして役員面接に臨んだ私…

役員面接の席上、私は、そんな気持ちの上でそれなりに述べたが、やはり役員軍団からの反応は薄い。彼らは、「これまでのやり方じゃ上手くいかない」とは感じつつも、「上」と「下」という階級社会から脱却できない。

私は構わずに、こう続けた。

私「…情報や指示の伝達周知などで課題はありますが、私は、その間を埋めるために、様々な者と日常的なコミュニケーションを取ることに注力しました。そして私は、誰に対しても、どんな場面であっても、相手に”敬意”を持って接するようにしています。」

コイツ、我々にもそうしろとでも言いたいのか?こんなことを一生懸命言って何が目的なんだ?とでも思われたかもしれない。

創業者一族はまた別のやり方が通用するとしても、所詮サラリーマン経営者に過ぎない方々は、相当鈍くなっているであろう「最前線の人々の感覚」にもっと覚悟を持って踏み込んでほしいと思う。

 

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