
私の一族はすっかり病院のお世話に
今日は、2週間毎の病院の日。このまま行けば、職場復帰前の最後の病院になる。思えば、この病院にも随分と通ったものだ…、と、少し感慨深い気持ちになる。
相変わらず駐車場は満車に近い状態で、停めるところを探すのに難儀する。ようやく1ヶ所見つけて車を止め、正面入り口に向かって歩いていると、「なに、病院かい?」と声を掛けられた。誰?と思って振り返ると、父が立っていた。
私「なんだ、今日は母さんの病院だっけ?」
父「そう、もう2時間も待ってるんだけど、全然終わらないんだわ」
母は、3ヶ月前に大腸がんの手術をし、今は抗がん剤治療のために2週間毎に病院に来ている。71歳になる父はその送迎である。今はまだ自分で車を運転しているが、そんなに遠くない未来には、運転免許証を返納することになるだろう。そんなことを考えると、自分も両親も歳をとったなあと思う。
さて、診察はいかに…
父と別れ、待合室に向かう。待合エリアの患者はまばら。今日は空いているようだ。ラッキーと思いながら15分程待つと、直ぐに番号を呼ばれた。
医師「こんにちは、〇〇さん、…さて、どうでしたか?」
私「はい、順調に経過していたと思います。家族からも、表情が随分柔らかくなったと言われますし。」
医師「そうですね。4月に初めてお会いした時と比べても、ずっと良くなりましたね。」
私「はい、ありがとうございます。」
この医師はあまり視線を合わせないタイプなのだが、この時ばかりは、グッと焦点を合わせて私の目を見ていた。さすが精神科医である。見る人が見れば分かるのだろう。
医師「では、職場復帰の方は、予定通り7月2日の月曜日からということでいいでしょう。」
私「あ、先生、職場復帰のことなんですが、一昨日、職場の上司から連絡がありまして、早退という風にすると、工場には色々な従業員がいるし、変な目で見られるんじゃないかということを気にしているようなんです。早く新しい職場に馴染むには、フルタイムで復帰した方がいいんじゃないかと。」
医師「…う~ん、なるほど、確かにそれは余計な心労にはなりそうですね。ただ、最初は慎重に行く方がいいんですけどね。」
私「それはそうだと思います。ただ、職場の言っていることも分かるので、どうしたらいいかと…。」
医師「…んん、大丈夫だとは思うので、ま、いいことにしましょう。ただ、無理はしないで下さいね。残業もしないように配慮してもらって下さい。」
私「はい、分かりました。あと…。」
医師「あ、職場の方から、診断書を出して欲しいようなことは言われませんでしたか?」
私「あ、はい、言われてます。」
医師は、私の言おうとしていることは全部お見通しのようだった。これまで、この先生を入れて3名の医師に診てもらってきたが、今では、この医師が一番だと感じていた。
この病気は客観的事実が出てこないが故に、医師と患者の関係性は非常に重要であるが、第一印象で即決したり、安易なドクターショッピングには走らずに、しばらくは腰を据えてお付き合いしてみることをお勧めしたい。医師と患者の信頼関係は一朝一夕には出来上がらないのである。
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