
新職場の居心地
職場復帰して一ヶ月が経ち、新しい月に入った。
私が異動になって配属された工場は、約80名の従業員が働いており、その内、外国人実習生の女性が約30名、日本人の女性作業員が約30名、男性作業員が10名、女性事務員が1名、職員が5名、そして管理職が2名である。
私は曲がりなりにも管理職なので、このヒエラルキーの中では工場長に次ぐNo.2に位置することになる。しかし、工場における実務経験は20数年前にさかのぼり、品質管理の知識や設備面のノウハウはゼロに近く、ただのワーカーとしての能力しかない。
会計や税務、原材料の仕入、システム管理の経験は豊富だが、そんなものは、目の前の仕事には殆ど役に立たない。これは自分でも分かっていたが、時折、情けない気持ちになることもある。
しかし、工場長を始め、工場長代理から以下の職員達、またアルバイトの者を含めて、そんなことは先刻承知のようで、私に対して、「チッ、使えねえな」とか「あ~ハイハイ」といったようなことを思わせるような態度は全く無く、こちらからの質問には詳しく答えてくれた。それどころか、むしろ私の異動を歓迎している風でさえある。
勿論、役職だけは上なので、いずれ自分達の上にくるかもしれない人だと思えば、そう粗末には扱えないだろう。ただ、そういう部分を差し引いても、異動先の工場は、私に対してフラットに接してくれるので、とても入って行きやすい。
役員・管理職会議
そんな中、ウチの会社で行われる様々な会議の内でも、四半期毎に開催する一番重たいヤツの案内が来ていた。出席メンバーは全役員と全管理職である。
前の部署にいた時は、私は議事進行係であったため、各部署への事前の根回しや、役員Aからの訳の分からない指示に奔走した挙句、「なんだあのくだらない会議は」などと後からお叱りを受ける始末で、非常に気が重い会議だった。
異動先の部署ではC工場長が居るので、殆ど新入社員である私の出番はマズ無さそうだが、出席だけはしないとな…と思いながら仕事をしていると、C工場長が近づいてきた。
C工場長「〇〇、週末の会議だけどさ。」
私「はい。」
C工場長「今回はさ、俺1人で出席するから、〇〇はいいよ。」
私「…あ、ハイ、そうですか。分かりました。」
ちょっと拍子抜けしたが、ホッとしたというのが正直なところだった。どの業界でもそうだが、ウチの会社の経営環境も非常に厳しい。特に役員はピリピリしており、会議の席上では、管理職に強烈なプレッシャーを掛けてくるに違いないのだ。
C工場長は、上司Aや上司Bと違って、私の、うつ病発症までの経緯をつぶさに見てきた訳ではない。そのせいか、私をどう扱っていいのか測りかねている節があった。
その点については、C工場長に少し申し訳ない気持ちだった。