うつ病物語 その62「人事調査票、やはりすんなり通らず」

人事調査票、やはりすんなり通らず

出社後まもなく、上司Aに呼ばれて別室に入った。予想はしていたが、やはりである。

上司A「これな、どういう思いで書いたんだ?」

私「はい、なかなか書けなくて相当悩みましたが…、嘘をついたり見栄をはっても仕方がないので、正直に書きました。」

上司A「そうか、俺はな、これをみてがっかりしたよ。中途の仕事も、部下のことも放り出して逃げるのか?」

私「え?」

上司A「これはな、究極のわがままだと思う。異動希望は、何かを成し遂げてから言うことではないのか?」

私「仰っていることは分かります。無責任な部分はあるかと思いますが、先の自分を考えた時に、遠回りかもしれませんが、別部署の経験を積まないとどうにもならないということが身に染みて感じたもので…。」

確かに、上司Aの言う通りであった。仮にも課長である者が、部下や中途の仕事を放りだして異動すると言っているのだ。無責任と言われても仕方がない。しかし、課長職、それからその先を担わなくてはならない自分を考えたとき、このままここに居ても状況を打開できないと強く思ったのだ。勿論、病気のこともある。

役員Aの異常な拘りに対する苦労

上司A「それに、自分から手を挙げて取り組んだ業務システムはどうするんだ?もうどうでもいいのか?」

私「いえ、業務システムは、システムの導入自体は完了しています。テストも問題ないですし、担当者レベルでは運用方法も殆ど整理出来ています。あとは細部というか、役員Aが中身を把握してくれれば…。」

上司A「いや、そこが問題なんだろ?慎重なお前のことだからそんなことはないと思っているが、役員Aは、お前が勝手にやったように思っているぞ?」

私「いえいえ、まさか、数百万円のパッケージソフトですから、稟議書を回す前に役員Aには説明を済ませてますし、その時に承諾を貰っています。」

組織として当たり前のことであり、独断で進めたのでは決してない。例えば家を建てる時、間取りや外観イメージを共有してから契約を交わすが、工事を進めていくと、変更点や追加事項が出てくる。

重要なポイントであれば、勿論、協議することになるが、それが、「予定していたドアチェックが廃版になっていたので別メーカーの同等品に変更しました」なんていうレベルの場合、担当者間で決めていかないと工事はいつまで経っても終わらない。

役員Aは、そういう本当に細かいところまで説明を受け、全部分かっていないとダメなタイプであった。また、承知したことを忘れたり、承諾したことを覆すことを平気でやる性格だった。今回の業務システムにも病的といえる拘りを随所で見せており、私に対して叱責を続けていたのだった。

結局、人事調査票は再提出に

上司A「…まあ、それはともかく、異動といっても受け入れ先はないぞ。お前が長期で休んだ時に、各部署に聞いて回ったが、現場経験のない管理職は生産部門にとっちゃ莫大なコストでしかない。」

私「…そうかもしれません。」

上司A「それに、お前が体調を崩しているせいで、業務の多くを被ってもらっている上司Bのことを考えたら、こういう人事調査票にはならないはずだ。俺も上司Bも、お前が前を向いている限りはフォロー出来るが、そうでなくなった時には何も出来ない。もう一度考え直してみろ。」

私「そうですね…、ただ、私はもう役員Aとこの先やっていく自信が持てません。重症になっていく気がして怖いです。本当にどうしようもなくなった時には、退職しかなくなってしまいます。」

上司A「…今、乗り越えなければ何も乗り越えられなくなる。間もなく年末年始休日に入る。家族ともよく話し合って考えたらどうだ?今みたいに体調が悪い時の考え方とはまた違ってくるはずだぞ。」

色々と言いたいことはあったが、全ては自分の弱さに繋がっていく気がした。これも病気のせいなのか、それとも本当に弱いだけの人間なのか…。しかし、もう一度ゆっくり考えるのは悪くない。とにかく、勇気を出して意思表示はしたのだ。私は上司Aに頭を下げて、会議室を出た。

 

うつ病物語 その61へ     うつ病物語 その63へ     うつ病物語 その1へ

スポンサーリンク

Twitterでフォローしよう

おすすめの記事