うつ病物語 その51「繁忙期特有の気苦労」

繁忙期特有の気苦労

今は会社の繁忙期の真っ最中だったが、この時期は、朝の情報による操業予定と、昼、午後になってからの状況の変化が激しく、予定がまるで変ってしまうことがザラにあるため、1時間単位で最新情報を集め、現在以降と明日の操業イメージをアップデートし続け、各所への連絡や調整などを行う必要があった。

これまで、この業務は上司Aが担当で、上司Bと私がバックアップしていたが、上司Aは定年まで2年を切っているため、今年から本格的に私に引き継ぐことになっていた。私も、それは自分自身のためにもマスターしておかなければと思ってはいたものの、課員2名の退職により抱えている実務が重たくなっていたこと、また、うつ病の発症により、未経験の仕事に対する対応力が著しく低下していたため、内心では、無理なのではないかとも思っていた。

そんな状況で日々、引継ぎを受けていたが、ある日、上司Aが所用で午後から早退してしまった。案の定、そういう日に限って状況が急変し、上司Aが早退前に各所に指示していた幾つかを変更することになった。どのように変更するのかは何とか自分で判断が付き、事なきを得たのだが、そのことを上司Aに伝えておかなければいけない。こういう時の常として、いつも不機嫌な対応になるので気が進まなかったが、夕方、時間を見計らって電話を入れる。

私「〇〇です。あの、明日の予定ですが、△△と◇◇の状況が変わったので、☆☆のように変更して連絡をし直しました。」

上司A「あ?なんでそういう考えになるんだ。」

私「いえ、△△と◇◇の状況が変わったものですから、〇〇工場長と〇〇役員に相談して、それが一番いいということに…。」

上司A「それは分かったって。お前の考えはどうなんだ。」

なぜかヒートアップしてくる上司A。やはりこうなったか、と暗くなる私。ああ早く電話を切ってしまいたい。

私「考えというか、元々は〇〇役員から始まった話ですし、各所と協議して決めましたので…。」

上司A「もういい、〇〇工場長に電話して聞く(ブチッ)」

あまりに予想通りの反応だったので少し笑えても来たが、なぜ、いちいち興奮してくるのかが理解出来なかった。

上司Aの腹積もりが分からない

そして翌日、朝イチから上司Aに呼び出され、一連の動きについて注文を付ける説教をもらった。結果的には問題なかったせいか、上司Aの機嫌は普通に戻っていたが、要するに役員や工場長の考えを聞く前に、自分で考えろということらしい。

上司A「いいか、こういうことが管理職の動きなんだ。ただの調整係じゃないんだ、分かったか?病気のせいで人の話をなかなか理解出来ない、考えることが出来ないと言っていたが、こういう仕事は出来るのか?最近の調子はどうなんだ?」

私「正直なところ、現状では自信がありません。体調はいい時と悪い時を繰り返していますし…。」

上司A「うーん、そうか…、自分で考えて、という部分は出来ないという理解でいいのか?」

私「そうですね…、今週末からは、決算作業も本格的に始まりますし、退職者の代わりに新しく配属した者も現状パンクしているので、私がフォローに入らないといけませんし…。」

上司A「今まで、〇〇はそちら方面に特化してきたから、俺がやっている仕事への理解度が低い。そのツケが今きていると思っているし、一歩踏み出していかなければならないんだぞ?頑張っていこうという意識はあるのか?」

私「はい、意識自体は持っています。…ただ、現状の手薄なメンバーと、この体調では難しいです。」

上司A「分かった。そっちはそっちで大変なのは分かっているから、そちらの方面を全力で頑張ってくれ。」

私との面談後、上司Aは上司Bを呼んで、別室で長々と話をしていた。何を話しているのかは何となく想像できたが、私は酷い自己嫌悪に陥っていた。現状を打破出来ない苦しみ、あるべき姿に近付けないもどかしさで胸が一杯だった。今のままの私はゼロ評価みたいなもので、メンバーが手薄だろうと何だろうと、切り盛りして上司Aの仕事を取るくらいの動きをしろと要求されていた。会社のリクエストに社員は応えなければならない。

昼休み、屋上で立て続けにタバコを3本吸った。ここから飛び降りたらどんな騒ぎになるのか想像した。このまま早退したい気持ちに駆られたが、何とか踏みとどまった。

 

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