うつ病物語 その116「主人が休職中の家族達は…」

うつ病物語

主人が休職中の家族達は…

職場復帰して無事に一週間が過ぎ、家庭はささやかなお祝いムードであった。”一家の主に位置する者が5ヶ月休職”という現実は、本人よりも、それを支える家族の方が、重く辛いものだったのかもしれない。

休職中に一度、風呂に入っている時に、中学一年になる長男に、こう聞いてみたことがある。

私「なあ〇〇、お父さん、会社をずっと休んでいるだろう?」

長男「うん。」

私「…これってさ、どう思う?」

長男「う~ん…、だってさ、病気なんでしょ?」

私「うん、まあね。…いや、あのさ、お父さんの病気、どういう病気だか分かるか?」

私がそう問うと、長男は少し難しい顔をした。しかし直ぐに答えを返してきた。

長男「うん、何となくは。…身体の病気じゃないんでしょ。」

知らない間に、長男は随分と大人になっていた。私の回復具合が思わしくなく、妻の色々なストレスが限界に近付いていた時に言われた「貴方がこうやって病気でいる間に、子供達の貴重な一時が過ぎて行っているんだよ!」という言葉が脳裏を過ぎる。

私「…そう、何ていうか、精神の、心の内面の病気なんだよ。」

長男は、更に大人びた表情をして私を見ている。

私「…まあ、大分良くなって来たんだけどね。あと少しのところまで来ているんだ。大丈夫だよ、心配するな。」

長男は短く「うん。」と言っただけで、シャンプーに手を伸ばした。長男は、私が5ヶ月もの間、延々と会社を休んでいたにも関わらず、そのことに関することを一切、何も聞いてくることは無かった。私が、そのことについて答えにくいであろうことを、長男は分かっていたのだと思う。

同居している義母にしても、それは同じだった。「体調はどう?」とすら、聞いてくることは無かった。うつ病について勉強した妻の計らいもあって、私に、一切のストレス、またプレッシャーを感じさせない、という姿勢で、うちの家族の基本方針は徹底されていた。

病魔の最中にある私には、そのことに気付くことも感謝する余裕も無かったが、お蔭で、ただひたすらゆっくりすることに時間を費やすことが出来た。

私は、休職中、本当に気の向くままに過ごした。好きな時間に起き、気が向くままに本屋に行き、レンタルCDを借り、自分の食べたい物を食べるために料理をした。たまに勉強もし、ブログに好きなことを書き、始めたばかりのギターをイタズラし、天気が良い時にはドライブをして、時には釣りに興じた。

しかし、期間限定とは言え、そんな悠々自適のような生活でも、満たされた感覚は無かった。自分は、これからどうなってしまうのだろう?と考えると、言いようのない不安に押しつぶされそうだった。

 

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