うつ病物語 その112「懐かしい雰囲気」

うつ病物語

初仕事!

C工場長はF工場長代理に私のことを引き継ぐと、現場事務所に戻っていった。いよいよ、仕事である。

F代理「今は、ちょうどラインの型替えをしているところで、機械類を運搬したりしているところなんですよ。課長も、それを手伝ってもらえますか?」

私「はい、分かりました。」

私が配属された△△工場では、主に6種類の製品を製造しているが、原料調達時期や製品の需要期に合わせて製造ラインの変更を行う。今がちょうとその時期なのであった。

右も左も分からない私としては、ライン作業に張り付く方が分かりやすくて良かったのだが、最初からハードルが高い。私は言われるままに、ホコリや水が付かないように、機械類にラップを巻いて倉庫まで運搬する。ケガだけはしないように…と、気を付けて作業していると、あっと言う間に休憩時間になった。

懐かしい雰囲気

私のような幹部職員、特に管理職は、現場事務所で休憩するのが普通なのだが、何しろ今はズブの素人である。それに、先ずは現場で汗を流している従業員、請負社員、派遣社員達に自分のことを分かってもらい、1日も早く仲間だと認めてもらうのが先決である。

私は作業員達用の休憩室に向かい、ちょっと緊張しながらドアを開ける。既に休憩に入っていた5人が一斉に私の方を向く。

私「お疲れ様です。」

従業員達「お疲れ様でーす。」

他愛もない話で探り探りではあるが、少しずつ距離を縮めるような会話をする私と従業員達。彼らにしても、私が入ってきたことに興味津々である。それはそうだろう、5ヶ月前までは、本社事務所で決算書や税務申告書を作っていたような男である。”なんでこの時期にうちの工場へ?”と不思議がるのが普通だ。

全く違う世界に入ってきたばかりであるが、私は妙な居心地の良さを感じていた。そう、私が近年付き合ってきた人達…、役員Aを始めとする役員連中、総務のメンバー、各セクションの管理職達、顧問税理士や会計士、本社経理部の連中、システム会社の営業担当やSE、生保会社の部長…、色んな人達と接してきたが、それらとはまるで違うノリ、仕事の根源のような別種の雰囲気がそこにあった。

(こういうノリ、懐かしいな…。そういや、これが現場だったな…。)

管理の仕事ばかりを長い間やってきたせいで、こういう最前線の現場の感覚を、私はすっかり忘れていた。これを忘れているようでは、良い仕事は出来ない…。

しかしどうやら、私がどうして長期で休んでいたのかについては、殆どの従業員が知っているようだった。私の入社時を知る定年後再雇用の女性達からは、「なに、接待続きで疲れたのかい?」とか「あ~そういう仕事じゃ気持ちが疲れるね」とか「現場の方がきっといいよ」とか、気遣いのニュアンスが含まれた言葉を随分と掛けられた。

だが、不思議と、「皆、私のことをどう思っているのだろうか?」というような不安な気持ちは沸き起こってこなかった。やはり”うつ病”はかなり良くなっているようだった。

 

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