タイトルからして風格漂う名作中の名作「寄生獣」
遠い宇宙から地球に飛来した異星人(寄生生物)が、本来の目的である脳を奪えずに、主人公の右手に寄生することになってしまった「ミギー」と、その状況に苦悩しながらも、幾多の障壁を経て人間的成長を遂げる男子高校生「泉 新一」との種族を超えた友情を描きながら、「人類とは?」「生物とは?」「地球とは?」という超難問を丁寧に扱いつつ、ひとつの答えを提示した作品。
「寄生獣」という漫画に衝撃を受けた者として、結構考えて、こうやって説明してみたものの、せいぜいその半分くらいしか説明出来ていない感じがするスゲエ漫画。
「モーニングオープン」「月間アフタヌーン」に連載されたのは1988年から1995年までと、20数年以上昔の作品だが、このテーマを異星人設定の切り口で、かつエンタメ性十分に描くのは、今後どんな漫画家が現れようとも相当難しいのではないか?と思わされるほどの完成度を誇る。
作者の岩明均が「あとがき」で、デビュー作である「寄生獣」が思いのほか上手く行ってしまい、後々の「壁」や「ハードル」として大変なことになるのではと述べているが、事実、岩明均は、その後も「ヒストリエ」など作家性の強い作品を描く一流の漫画家ではあるものの、やはり代表作は「寄生獣」のままだ。
作者の着眼点の卓越さと、当時の若さ(未熟さを含む)が一瞬のタイミングを逃さずに融合した、この瞬間でしか成しえなかった超傑作が「寄生獣」であり、作者には気の毒だが、永遠に越えられない作品なのかもしれない。
今後数十年に渡って語り継がれるであろう傑作
「これは、人間がどこから来て、どこへ行くのかを、自らに問う作品である。」
と、単行本の帯には仰々しいキャッチコピーが付けられたが、この作品に限っては誇張でも何でもない。この凄さは一体どこから来るのか?を考えてみた時の私なりの解釈はこうだ。
「一番最初に描こうと思った”核の部分”がとにかく素晴らしく、世界を広げたりすること(=蛇足)が皆無で、第一話から数話で提示したテーマを完璧に過不足なく描いていること。そのせいで、作品としての”塊感”が凄い。」
余計なキャラやエピソードを加えることなく、その神髄だけを必要十分に描くことは極めて困難な所業だと思う。これだけ絶賛されている名作「寄生獣」は、コミックスたった10巻で完結する。
この作品に関しては特に、劇中の展開には一切触れずに紹介したい。読後、物凄い満足感が得られることは間違いない、漫画好きのみならず、小説好きから映画好きから何から何まで、とにかく中学生以上のあらゆる階層、特に男性にお勧めの漫画だ!