
息子と釣りに出かける
この日は朝から気持ちの良い青空が広がっていた。こんな日は自然に活動的な気分になる。このような自然な反応をするのも、うつ病が回復してきた証であった。
午前中は、義母を連れて近隣の町まで小一時間車を走らせ、名産の牡蠣とホタテを購入してきた。昼からは、部活動から帰ってきた長男を連れて、市内の川に釣りに出かけた。
気が付いたら中学生になる長男との釣り。もう親離れをしていく年齢でもある。今日は声を掛けたら乗り気でついてきたが、こうやって一緒に釣りをする機会なんて、もう何度も無いかもしれない。
行きがてらのファストフード店で牛丼を買う。すかさず「大盛」を注文する長男、ずいぶん食べるようになったな…と、ここでも息子の成長を実感する。そして近くのコンビニで色々買いこみ、最後に釣り餌と仕掛けを選ぶ。
車の中で待とうとする長男に一声かけて店内へ招く。私は決して釣りに精通している訳ではなく、河口や岸壁と投げ釣りをするのが好きなだけだ。流石に何も釣れないと面白くないが、目当ての魚が釣れなくても、のんびりと竿を眺めているだけで、結構満足するクチである。
そんなインチキ釣り師でも、息子には自分の知っていることは何でも教えてあげたいし、遊びでも何でも一通り出来るようになってほしかった。
今日のターゲットはカレイとコマイ。仕掛けはこの辺りを選ぶんだぞ、と息子に教える。「こっちのやつとはどう違うの?」と聞いてくる息子。一応の興味は持っているようで、親としては嬉しい。
釣り糸を垂れてふと考える「クラッシャー上司」のこと
当たりはボチボチ、目当てのカレイはサッパリだが、何かしら掛かれば楽しみはあるのが釣りというものだ。息子も結構楽しんでいるようだった。
「ふう…。」
明日は、上司Aと会って話をする日だった。いったいどんな話をされるのであろうか?先日の調子では、あまり良い話は期待出来なかった。
上司Aの電話では、どうやら役員Aは前と同様、いや前にも増して傍若無人に振舞っているような言い方だった。そして、そんな環境に私が戻るのであれば、すぐに再発してしまうのではないかと、ひどく心配しているようだった。
休職期間中、いや休職に入る前から何度も考えてきたが、役員Aは、徹底的に合わない相手と言って良かった。彼の仕事に対するエネルギッシュさ、スピード感、行動力には尊敬の念を抱いたが、それ以外の部分は、私と完全に相反していた。
気力で乗り越えるんだ、出来なきゃ徹夜するんだ、そんなのは女の仕事だ、…こうした旧日本陸軍的な根性論や、本人は隠しているつもりでも丸わかりの女性蔑視の思想には、もううんざりだった。
役員Aの下についた6名の部下全員が、2年と持たずに次々退職、また異動になったような上役である。もう還暦が近いような年齢では、今から人格が変わるとはとても思えない。
この役員Aのように、プレイヤーとしては優秀で実績も残すが、マネージャーとしては部下を育てられずに壊してしまうタイプの上司を「クラッシャー上司」というらしい。
この「クラッシャー上司」という言葉は、あるときネットで見たのだが、その分類項目に、うちの役員Aは見事に合致していた。
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