うつ病物語 その105「復帰初日は役員面談」

復帰初日は役員面談

上司A「それと最後に、もうひとつあるんだ。」

私「はい、何でしょう?」

もうそろそろ終わりかと思っていたが、まだあるらしい。

上司A「復帰初日は、役員が面談することになっている。恐らく、お前の覚悟とか、5ヶ月休職して何を思い、どういう気持ちで新しい部署で復帰するつもりなのかとか、色々なものを見るのだと思う。」

…違和感があった。そして実に会社組織らしいなとも思った。しかし、なぜ、うつ病という病気のせいで休み、復職するだけで、こんな風に試されるようなプロセスを踏むのだろうか?

少し考えて、先程の役員Aのことを思い出した。そうか、これも同じなのだ。”この男は会社に恨みを持っていないだろうか?”ということを直に確認したいのだ。

何気ないやり取りの中にこそ、その人の内なる考えが滲み出るものである。私が役員Aや会社に対して敵意を持っていなければよし、さもなくば、解雇は出来ないにしても、要注意人物としてマークされ、中枢から外した位置に就けたりするのであろう。

上司A「復職までまだ1週間以上ある。今から、どうやって喋るのか考えておいた方がいいぞ。特に一言目に何を持ってくるかは大事だ。」

…また違和感。上司Aは、私に何かヒントを与えようとしている。

上司A「あんまり詳しく話すなと言われているけど、まあ、役員に対して、どういう姿勢で話をするのか、う~ん、分かるだろう?」

”長い間ご迷惑をお掛けしました”、”新たなチャンスを頂きましてありがとうございます”、”会社の対応には感謝しております”…とまあ、こんなところだろうか。

私「…はい、先程も少し話ましたが、復帰にあたって中々100%の体調に持っていけなかったところ、工場部門への異動という話を頂き、道が開けたような気分になりました。今は、新入社員の気持ちで一から頑張るつもりです。会社には、特に総務のメンバーには多大な迷惑をお掛けしました。それに上司Aをはじめ、色んな方に動いて頂きまして、本当に感謝しております。」

上司A「うん、そうだな。」

上司Aは、それなら大丈夫だろう、といった表情で頷いている。上司Bも同じだった。

私の気持ちに嘘はない。しかし、やはりこの病気に関して”公傷扱い”の要素は無いことを感じた。

『ちょっと言動は荒いがデキる上役についていけなかった弱いメンタルの社員がうつ病を発症してしまった。元の職場では再発しそうなので異動して使ってみるか…』

会社がやっていることは、これだけである。

ここには、会社の落ち度のようなものは一切存在しない。もし、それを少しでも認識しているのなら、私が休職している間に役員Aが専務に昇格したりしないだろう。

これが会社の考えなのだ。ほんの少し、一歩と言わず半歩でもこちら側に寄ってくれるだけで、私の心象は大きく変ってくるのに…。

この経営者側ならではの考え方は、どこの会社であっても大差はない。CSR経営とかSDGsがクローズアップされて、いくら大義名分を前面に出そうが、雇用者と労働者の力関係は、こういう場面で決定的に表れる。

 

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