思い出の曲 53曲目「東京の花売り娘」

思い出の曲

1946年リリース、岡晴夫の12枚目のシングル。

…とは言うものの、私は、いわゆる団塊ジュニア世代なので、戦後まもなくに発表された「東京の花売り娘」なんていう曲はリアルタイムで聴いたことはないし、歌い手の「岡晴夫」も全く存じない。

では、なぜこんな曲がこのコーナーに挙がってきたのか…?

実は、1984年公開の角川映画、「麻雀放浪記」の主題曲なのである。

この映画、初視聴はテレビだったが、当時はVHSビデオに録って何度も見返した。ちょうど友人達と麻雀を覚えたての頃に出会った映画だったこともあり、この映画のネタで大いに盛り上がったものだった。

作品としても、いかにも角川映画という雰囲気を感じさせるいい映画で、麻雀を知らなくても楽しめる作りになっており(勿論、麻雀好きはより楽しめる)、後にDVDを購入したほどに好きな映画だ。

キャストは以下の通り。

原作:阿佐田哲也

監督・脚本:和田誠

坊や哲:真田広之

ドサ健:鹿賀丈史

女衒の達:加藤健一

上州虎:名古屋章

出目徳:高品格

ママ:加賀まりこ

まゆみ:大竹しのぶ

 

…と、非常に個性は強いものの実力者揃いのメンツである。これでつまらない映画になるはずもなく、特に、主人公の真田広之に玄人麻雀を仕込む出目徳役の高品格は、この年の日本アカデミー賞他の各映画賞の助演男優賞を受賞した。

この映画に関しては、全編が好きなシーンと言ってもいいくらいなのだが、あえてひとつ、好きなシーンを挙げる。

 

東京上野の賭場を席巻していたドサ健(鹿賀丈史)だったが、出目徳(高品格)と坊や哲(真田広之)の子弟コンビに「2の2の天和」などの玄人技で徹底的に打ち負かされ、ドサ健の手下と共に、宿無し文無しの状態にまで落ちぶれてしまう。

リベンジ勝負に燃えるドサ健は、そのための元手を工面するために、ついに自分の女である、まゆみ(大竹しのぶ)を吉原に売る行動に出る。

歪んではいるが、ドサ健に深い愛情を持っているまゆみは、吉原で女郎になってくれという健の頼みを、渋々ながら承諾する。

しかし、吉原への引き渡し交渉をするための待ち合わせ場所に現れたのは、出目徳との勝負を観戦していた、女衒の達(加藤健一)であった。

「なんだ、アンタか、…悪いがこの話は無しだ。」

「…お待ちなさい。アンタまた出目徳と勝負するんでしょう?そのためには金がいる。だから女を売る。私じゃなくても誰かに売る。…悪いことは言わない。他の奴に売るのなら、私にしておきなさい。」

話の真意が分からず、女衒の達を見るドサ健。

「私は人買いだが、しばらくの間、商売変えして質屋になりますよ。」

「…?」

「品物を預かるってことさ。…ケンさん、私はね、アンタに惚れたんですよ。アンタは極道者だが、本物の博打うちだ。…本物はいいものです。」

 

戦後の混乱期が舞台とはいえ、真っ当な生き方の正反対を行くならず者、完全にダークサイドの人々に焦点を当てた映画「麻雀放浪記」であるが、人や人生の神髄を提示するような、味わい深い映画だった。

私は、この映画に出てくるような”博打うち”とは真逆の生き方をしている、いわゆる真面目な小市民であるが、彼らの短くも極太の生き様に惹かれるのは、どうしてなのだろう?

この「東京の花売り娘」は、最後の大勝負が始まるまでのプロローグとして、劇中の”ラヂオ”から流れるのだが、焼け野原になった東京に、せめて歌で生気を与えようとする前向きなエネルギー に、相反するような博打うちの馬鹿どもとの対比が、妙な緊張感を生み出していて、とても効果的なのだ。

この「麻雀放浪記」は、もう地上波で放送することはないだろうが、現在なら色々な方法で試聴できるはず。本物のギャンブラーの凄みが画面から迸りつつも、物語としてのエンタメ性を兼ね備えた、日本映画らしい作品を探しているなら、是非チェックしてほしい。

 

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