まだ中学2年生だった私が、その類まれなボーカルの個性と、繊細なサウンドに強く心を掴まれて「安全地帯」というバンドに引き込まれた思い出の曲であり、それから30数年経過した今でも、一番好きだと言える曲。

安全地帯といえば、1983年にリリースされた「ワインレッドの心」でブレイクし、「恋の予感」「熱視線」の連続ヒットで一発屋の壁を払拭し、「悲しみにさよなら」で当時の日本ポップス界での地位を確立したロックバンドだ。当時は、安全地帯やサザンオールスターズ、アルフィーなどといったバンドが一斉に芽吹いた時代であり、彼らの音楽ジャンルは、「ニューミュージック」と表現されたりしていた。

しかしこの曲、それなりに安全地帯の音楽を知る人でも、聞き覚えがないタイトルだと思う。
それもそのはず、この「ノーコメント」は、先に触れた「悲しみにさよなら」のカップリング曲(当時はレコードのB面)なのだ。

安全地帯のリーダーかつボーカルで、殆ど全ての楽曲を作曲している玉置浩二は、当時、”プッツン女優”と言われた石原真理子との不倫で連日ワイドショーを賑わしており、バンドとしての注目度以上にそちらの方面でも時の人であった。

私はというと、不倫騒ぎにはあまり興味がなく、玉置浩二というか、”安全地帯”の音楽性に魅せられた者として、中学校のクラス内でも随一のファンぶりを公言していたが、その切っ掛けになったのが、この曲だった。

先ず言っておきたいのだが、この「ノーコメント」は、イントロが抜群に決まっている。玉置の同級生でありバンドの中核である、ギターの武沢が奏でた音はシャキシャキでキレ良く、この曲の導入部分を冷めた雰囲気で奏で、お?ちょっとカッコイイ系の曲だな?とリスナーを惹きつける。

この頃の玉置のボーカルは、現在のように、本人が気持ちよく歌い上げるスタイルではなく、抑え目にコントロールされた繊細なもので、売りであった”都会の夜を歌うバンド”のボーカルとして完璧。

そして、6人目の安全地帯と言われたほどに、安全地帯の音楽に親和性を持っている松井五郎の詞は、今まさにマスコミに追われ続けている玉置を揶揄したような内容で、ボーカル、サウンド、詩の世界観、この全てが見事な相乗効果を発揮し、都会的な緊張感のある曲として仕上がっている。

この曲は、安全地帯のメンバーもお気に入りで、またファンにも好まれ、活動休止時にリリースされたベスト版にも収録された。

まだまだあどけなさの残る中学生だった私は、この曲に自分の何かを鷲掴みにされてしまい、以降、様々なバンドを聴きまくるようになった。安全地帯の「ノーコメント」は、私の中の何かが開眼したと言っていい、衝撃的な一曲だった。

安全地帯の音楽に触れたことがある方なら、バラード中心のシングル群とは一味違う、この「ノーコメント」を是非聴いてほしい!

…ちなみに、このレコードを買ってきたのは私の弟であり、私は運よく、この曲に出会うことが出来たというオチがつく。ここまで熱く述べておきながら、安全地帯のメンバーには少々申し訳ない。

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