魔夜峰央「パタリロ!」
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まれに見る長寿漫画

1978年から2020年現在まで42年間も連載が続いているという、にわかには信じられない漫画。

ダイヤモンド産業を基幹産業として潤うため税金のない架空の王国、マリネラ王国の少年国王で、守銭奴で変態だが超能力を持つ天才パタリロが、直属の側近であるタマネギ部隊のメンバーや、一応の友人?であるMI6の腕利き情報員バンコラン少佐、その愛人マライヒ達と、様々な騒動を繰り広げる作品。

分類すればギャグ作品なんだけど、基本はシリアスな展開が多い。しかし、そのシリアスなハナシの途中でも、唐突にパタリロ達のギャグが延々と入り何度も脱線、ドタバタした感じがずーっと途切れず、他には見られない「パタリロ!」ならではのノリが続く不思議な作風。

本線のストーリーは、本格ミステリーからスリラー、人情物からサスペンス、スパイアクションと非常に多岐にわたり、これだけの長寿シリーズなのに読者を全く飽きさせない。作者「摩夜峰央」氏の懐の深さ、途方もない引き出しの多彩さを感じること請け合いだ。

パタリロとバンコラン

ここまで10冊の漫画作品を紹介してきて、ふと見ると、「BANANAFISH」 「動物のお医者さん」「パタリロ!」と、うち3冊が女性誌で連載された(されている)漫画。

10代から20代過ぎまで、毎週読んでいたのは「少年ジャンプ」だけだったのになぜこうなったのか不思議だが、これも「パタリロ!」が男性読者を魅了する証拠なんじゃないだろうか。

さて、これだけ長年続いてきた作品なので、主人公のパタリロが絡んだ相手キャラは膨大な数になるが、一番面白いのは、やはり主役に近い位置にいるバンコラン少佐との絡み。

バンコランとパタリロは、先の説明で、”一応の友人”としたものの、作品中に二人の友情を感じさせるエピソードはほぼ皆無だ。気遣うシーンが極まれにある程度で、罵り合ったり、罠に嵌めたり、利用したりと邪見に扱うシーンが続く。

互いの能力を認めていたり頼りにしている描写はそれなりに結構あるが、あくまでも依頼者と請負者の域を出ず、友情という感じではない。そのへんが非常にビジネスライクなのも読者としては面白ポイントだ。

主役と準主役であるこの2人を主軸として展開する話は数多いものの、時間の経過を考慮しない世界設定なので、キャラ間の相関図は最初から完成しており固定されている。

そのため、いくら物語が進んで共闘シーンが続くようなことがあっても、パタリロとバンコランの関係性は変化しない。互いを見直したり、より親密になったりするようなことは無いのだ。

例えば「ドラゴンボール」で完全な悪役として登場したピッコロやベジータが、読者もビックリの紆余曲折で、ライバルを通り越して仲間にまでなってしまったようなサプライズ展開は一切期待できない。

この辺は好みが分かれるところだが、40年以上に渡って続く作品になるには、ここは諦めなくてはならないところだったのかもしれない。

絶世の色男、MI6随一の腕利き、バンコラン少佐!

摩夜峰央氏の絵柄は超個性的であり、パタリロ以外の作品でも、もう一目一発で「摩夜峰央作品」であることが分かるレベル。

そのため、ごく初期の頃を除いて漫画家として安定してからは、もう絵柄は変りようがないと思っていたのだが、実は激しく劣化している…というネタが上がっているのだった。

いやいや、あのバンコランに限ってそんなことは、と思いつつ、ちょっと調べてみると…。

 全盛期のバンコラン

 晩年のバンコラン

ちょっとあり得ないレベルで変化していた。いやいや、別人じゃないすか。

…なんでこう、漫画家の絵柄というのは、全盛期が長く続かないのだろうか?変化はありつつも、いい感じを維持する漫画家よりも、残念な感じになる人のいかに多いことか…。

絵は、描き過ぎるとかえって下手になるのかもしれない。

 

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