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アイドル歌手として振り切れなかった池田政典

1986年8月リリース、後に俳優として活躍する池田政典のデビュー曲。

あの千葉真一が設立したアクション俳優を養成するJAC(ジャパンアクションクラブ)の12期生であり、甘いマスクとスマートな体形のみならず運動神経抜群。

元々は俳優さんだからなのか、歌唱中の振りというかステージアクションは大袈裟っつうか、やや演技がかっていて今見ると面白い。流石に身体はキレキレで、右足をスパッと上げる姿は全盛期の田原トシちゃんと互角以上だ。

シンガーとしては声色に素人っぽさが漂うものの音痴ではなく、不思議な清涼感があり、イケメンさと立ち振る舞いの爽やかを武器に、当時、結構な人気を集めた。

デビュー曲「ハートブレイカーは踊れない」もちょっと注目されたが、この次曲「Shadow Dancer」がダイドー缶コーヒーのCM効果でスマッシュヒット、続く「NIGHT OF SUMMER SIDE」はアニメ「きまぐれオレンジロード」の主題歌に採用され、連続ヒットを飛ばした。

が、歌手「池田政典」の盛り上がりはここまでで、その後1990年あたりまでシングルを出していたようだが12枚目のシングルで歌手活動は停止、俳優業に完全シフトして現在に至る。

80年代の”シティ・ポップ”

少し前から、日本の80年代ポップス、特に『シティポップ』が再評価されていて、アジア各国でリバイバル・ブーム現象が起きているとのこと。

その火付け役となったのは、山下達郎がプロデュースした竹内まりやのアルバム「ヴァラエティ」に収録された一曲「プラスティック・ラブ」で、YouYubeの再生回数はなんと3,000万回を超えており、80年代の日本シティ・ポップは宝の山として、日々、発掘作業が行われているそうだ。

私は当時、竹内まりやも山下達郎も全くノーチェックだったし、ギター等の演奏技法も分からなかったので知らなかったのだが、ギター師匠によると、山下達郎といえば「日本のカッティング・ギター十傑」の一人というくらいの名手とのこと。それはチェックしないと!と思って、2020年の今更ながら聴いてみた。

…が、やっぱりそんなにグッとは来ない。好きなツボじゃないのだ。今の私はギターで遊び始めたので、山下達郎のリズムや奏で方に関心はしたし、部屋に流れていても嫌ではないが、積極的に聴こうとは思わない。

バブル期を彩った日本のシティ・ポップ

今回取り上げた「ハートブレイカーは踊れない」と、その後の2曲「Shadow Dancer」「NIGHT OF SUMMER SIDE」の作曲・編曲陣は、林哲司氏、NO BODY、船山基紀氏といった方々で、私が好きな曲に高確率で関わっている面々。

この池田政典をプロデュースした面々の音楽も、山下達郎の音楽も、どちらも80年代のシティ・ポップスには違いないが、ちょっと毛色が違う。

池田政典の方は、初見のカッコよさや心地よさを追求した音というか、喉越しの良さ、調子の良さが魅力。より歌謡曲調だ。私は、結局のところ歌謡曲が好きなだけなのかもしれない。

こう言ってしまうと、山下達郎は客にもレベルが求められる一流シェフの料理で、池田政典の方は、出店でも提供できる庶民向けB級グルメみたいだが、それはトンデモナイ勘違い。

「ハートブレイカーは踊れない」のイントロのシンセサウンドが終わった後、AメロとBメロに流れるカッティング・ギターの音はとても美味しいプロの味。是非、味わってほしい。

 

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