ある休日のお昼時…
2019年1月下旬の土曜日、まったりした休日を満喫していた昼飯時に携帯が鳴った。画面を見ると「0120」から始まる電話だった。「何だろ?面倒だな…」と思いつつ、私は「ハイ?」と電話に出た。
「私、ソフトバンクの〇〇と申します。この度、毎月の通話料をお安くできるご案内をしておりまして…」
案の定、面倒くさい電話だった。これが聞いたことのない「ほにゃららシステム」とか、「なんちゃらサービス」とか、「〇×コミュニケーションズ」とか、「△U」とかからなら丁重かつ即座に電話を切るところだったが、自身が利用しているソフトバンクからとなれば、一応聞いておかなきゃならない。
「〇〇様はNTTのフレッツ光をご利用ですよね?ご存知かもしれませんが、弊社ソフトバンクはNTTと業務提携をしておりまして、この度、NTTとソフトバンクで別々になっていた料金請求をソフトバンクが一括することで、通話料を割引させて頂くサービスをご案内しております。」
続く説明によると、どうやら毎月のスマホ料金が1台につき1,000円引きになるという。嫁の分と合わせての2,000円引きは大きい。そして更に、使用しているメールアドレスから何から何まで現状と変わらず利用でき、別途料金も発生しないという。
ふ~ん、それならやってみてもいいかもな。面倒なことにはなりそうもないし…。こう思った私は、ソフトバンクの担当者が勧める話に乗っかることにした。
そして先方に引きずられる流れに…
「では、手続きを進めるにあたりまして、請求書の”転用承諾番号”が必要になります。この後、NTTにお繋ぎ致しますので、このままお待ち下さい。」
ムム…、面倒な雰囲気が漂ってきたが、これは仕方がない。直ぐにNTTに繋ぎ直され、今度はNTTの担当者の丁寧な説明を聞き、承諾する。ここまででおよそ20分経過。
その後、またソフトバンク担当者に代わり、このまま手続きを進めていくが、確認や説明のため、30~60分後に再度、連絡を入れるという。
請求元を一括するだけの手続きなので、「もう終わったんじゃないのか?」と思ったが、仕方が無いので「分かりました。」と返事をして電話を切る。
ここで、長電話を訝しげに観察していた嫁が、「なに?どこからの電話?大丈夫なの?」と声を掛けてきたので、「ああ、怪しいヤツじゃないので大丈夫。ソフトバンクからの電話で、NTTとソフトバンクの請求を一本化することで毎月のスマホの通話料が安くなるんだってさ。」と説明する。嫁は訝し気な表情をしながら、「ふ~ん…」。
そんなハナシを夫婦でしながら昼食を食べ終わった頃、最初の電話を切ってから30分後に、約束通りソフトバンクから電話が掛かってきた。なぜか最初に掛けてきた人物とは別の者だったが、経緯は承知しているようで、毎月の料金はこうなるとか、初月のみ3,000円の事務手数料が掛かるとか、切り替えに関して別途費用が掛かった場合にはキャッシュバックがあるとか、その他にも規約的なことを含めてペラペラと長い説明が続く。
私は、「何だか変な雰囲気だな…。なんでこんな七面倒臭いことになっているんだ…?」と、若干ワケが分からなくなりながら、ソフトバンク担当者の20分以上に渡る説明に生返事を返していたが、次の一言で眠気が覚めた。
「今後は、回線がソフトバンク光となるため、プロバイダもソフトバンクとなります。現在契約中のプロバイダは解約となりますので、そのお手続きをお願いします。なお、数日中に弊社からBB光ユニット(ルーター)をお送り致しますので、そちらに切り替えて頂きますようお願い致します。」
…は?いつの間にそんなハナシになったの?
私は”やられた!”という敗北感を味わいながら、動転する気持ちを抑えつつ、電話口の担当者に反射的に食い下がる。
「え?プロバイダがソフトバンクって…、そうなんですか?」
「はい、そのようになります。お送りしたBB光ユニットを接続して頂ければ、設定その他も不要で、直ぐに使えるようになりますので。」
「ハ?、あ、いや、ウチには、使っているWIFIルーターがあるんですけど。」
「そちらは今後、不要になります。お送りいたします弊社ルーター及びケーブルは最新型ですので、現状よりも速度は速くなると思います。勿論、一度、接続設定をされた後であれば、元のルーターに戻して頂いても結構ですが。」
…え?、イヤ、おいおい、回線もプロバイダも変わるって、え?そんなハナシだったか?
まったく何ということだろう、やはりこういうハナシだったのだ。電話を受けた時に直感した嫌な予感は間違いではなかった。既に頭の中は混乱していたが、延々と色んな説明を聞かされているうちにソフトバンク担当者の口車にしてやられたのだ。
私は、敗北感に打ちひしがれたが、今から全てを無かったことにするのは更に手間が掛かりそうだし、もう、何もかもが面倒臭かった。
…私は、全てに承諾をして電話を切った。
見事な作戦というしかない…のか?
以上が、休日の昼時にソフトバンクから掛かってきた電話で始まった、自宅のネット環境を知らず知らずのうちに”ソフトバンク光”に切り替えさせられた愚かなユーザーの顛末である。
記憶を頼りにポイントを絞って書き記したので、ソフトバンク担当者からはもっと細かい説明がなされていたはずだし、こんなやり取りでは無かった部分もある。ここでは、この出来事の雰囲気を感じてほしい。
最初の電話が12:06分、最後の電話は14:32分、その間、5回の電話があり、トータル57分間の通話だった。
私は約1時間に渡る、ソフトバンク担当者の流ちょうな電話口での説明に対し、「はい、分かりました。」と数えられないくらいの承諾をしてきた。途中、疲れてきて適当に返事をしたところもあった。だから、文句は言えないのだろう。
しかし、である。
私がここで文句を言いたいのは、最初のキャッチセールスの部分と、実際に行った(流れの中で承諾はしてしまったが)行為が全く違っている点である。
最初のソフトバンク担当者は確かに「NTTとソフトバンクで別々になっている請求を一本化することで、毎月の利用料金を割引する。」と私に説明した。
だが、私がやったこと(させられたこと)は、請求元の一本化というよりも、契約プロバイダとネット回線の変更、そしてルーターの交換であった。
今にして思えば、請求元を一本化するくらいで毎月の利用料が割引になるワケが無い。実は最初に、え?随分と太っ腹なハナシだな、とはちょっと思ったのだが、回線がソフトバンクになるのなら割引があるのも納得、結果的に請求も一本化される。世の中にそんな上手いハナシがあるわけがないのだ。
こんな勧誘が許されていいのか?
私は、今現在(2019年3月)もソフトバンクのユーザーだし、これからもきっとそうだと思うが、今回のインチキ臭い手口には、強い憤りを感じずにはいられない。
確かに、今回のソフトバンク光への切り替えで、毎月のネット料金は若干安くなったし、ソフトバンク契約のスマホ料金も安くなるようなので、私は実質的な被害が無いどころか、恩恵を受けたことになる。
しかし、私にはソフトバンク光への切り替え意志は全く無かった。”ソフトバンクとNTTの請求を一本化すると安くなる”、と説明されたので応じただけである。それが結果的には、ネット回線の切り替えになってしまった。
繰り返すが、私はネット回線の切り替え意志は全く無かったし、最初からずっとそんな説明では無かった。これを詐欺と言わずに何と言おう?第一、休日の昼時に急に掛かってきた電話から始まった畳みかけるような説明のオンパレードに、じっと冷静さを保てる者が一体どれだけいるだろうか?
ユーザーにとって、使用する回線が変わったりプロバイダが変更になるというのは、重要なインフラであるネット環境がどうなるのかという不安を感じる出来事であり、それはスマホ料金の割引云々よりも大事なことだ。
それを最初に出さず、”請求元を一本化するだけで割引に…”、というユーザーが気軽に応じそうなエサで釣りあげる手法は戦術としては上手いのかもしれないが、これは絶対に詐欺である。
もしこれが経営発信のもので、ソフトバンクとして組織的に意思統一されたものであるとしたら、これを平然と推進する企業は色々と腐っていると私は思う。
ソフトバンクが、仮にこんな戦法を取り続けるのであれば、短期的な成功はともかくとしても、少なくとも”誠実”や”信頼”という稀有な民族性を武器に今日を築いてきた日本という国のマーケットでは、いずれユーザーに見透かされ、追放されるのではないかと私は思う。
…ちなみに、送られてきたBB光ルーターの接続は簡単でネットには直ぐに繋がったものの、息子達のオンラインゲームや私のPC接続はブチブチと切れまくり、仕事でも使う嫁のPCは激遅となり、我が家のネット環境は劇的に悪化。翌日には、元々使っていたルータ―に戻すという散々な結果だった。
ルーターを戻した後は快適なので、ソフトバンク光の回線(実質はNTT回線)はしっかりしているものと思われる。せめてもの救いだった。
色々と文句を言ってきたが、モバイル通信分野の3強である「ドコモ」「au」「ソフトバンク」のなかで、業界に大きな刺激や改革をもたらす可能性が一番あるのはソフトバンクだと私は思っている。第3の存在としてこれからは正々堂々と頑張ってもらいたい。