バイク漫画の古典的存在!
「バリバリ伝説」は、1983年から1991年まで、週間少年マガジンに連載されて絶大な人気を博し、当時のバイクメンに多大な影響を与え、まだ珍しかったビデオアニメにもなった。
個人的には、ベストオブ・ザ・バイク漫画だと思っているけども、じゃあ他のバイク漫画は?と言われると、まともに読んだことが無いので説得力に欠ける…。
長身でイケメン、ケンカも無敵の主人公「巨摩 郡(こま ぐん)」が、峠で腕を磨く公道レーサーから、仲間やライバルとの出会い、ヒロインとの恋愛話も散りばめつつ、本格的にレーシングの世界に入り、GP500でワールドチャンピオンになるまでを描くサクセスストーリー。
このように紹介すると、一本道の単純なベタ話みたいだが、そこはやはり名作と称されるだけあって、主人公グンの熱いスピリットとレースシーンのリアルさ、またテンションの高さで、読者をグイグイ引っ張っる、超・名作マンガです!
郡の宿命のライバル「聖 秀吉」という存在
この「バリバリ伝説」は、「高校生編」「全日本選手権編」「海外GP編」の3部構成になっており、それぞれにライバルが出現するが、高校生編に出てくる宿命のライバル「聖 秀吉(ひじり ひでよし)」の存在感は特に大きかった。
初めてグンの前に立ちふさがる強敵、ヒデヨシは、初対面のグンに対し、「よおアンタ、背え高いな、何センチくらいあるんや?…まあ、ノッポはマヌケが多いけどな」と、登場するなりイキナリの挑戦的な態度でケンカを吹っ掛け、毎週のように峠でバトルを繰り広げる。
スズキの伝説バイクである「刀(カタナ)」を職人的なテクニックで乗りこなすヒデヨシは、海外にいる父親からの仕送りで生活費の苦労をせずに一人暮らしをするグンを”ボンボン走り”と激しくライバル視し、一方のグンは、完成された走りをするヒデヨシを「アイツには一生勝てないかも知れない」と思いながらも追い詰めていく。
結果的に2人は切磋琢磨することになり、紆余曲折の末、鈴鹿4耐にペアを組んで挑戦。
グンとヒデヨシはレース中に激しく衝突しながらも、その走りへの情熱と凄さを互いに認め合うことになり、劇的な優勝を飾る。
「バリバリ伝説」で、ライダーが交代して走る耐久レースが描かれたのは、この鈴鹿4耐が最後であり、2人の主人公が、その青春を燃やし尽くした物語は、漫画の盛り上がりとして最高潮に達した瞬間でもあった。
それだけに、グンとのいがみ合いが解消されて堅い友情が結ばれた後の、目を疑うような唐突なヒデヨシの事故死は多くの読者に衝撃を与えた。
存在が大きくなり過ぎたライバルキャラ「ヒデヨシ」
作者の後日談では、「存在がでかくなりすぎて主人公を喰う可能性があった」とのことで、ヒデヨシはやむなく物語から退場させられた訳だが、もっと他の方法があったのではないだろうか?私は、ここのくだりを思い出すたびに、不憫な気持ちになる。
”主人公を喰う可能性があったから”
それは作品を作る側としては深刻な問題だったのかもしれないが、作品とキャラを愛したファンはどうだったのだろうか。
「あしたのジョー」の力石徹だったり、「タッチ」の上杉和也のように、ストーリーの必然性が繋がれた上で死んでいくならば、なんとか納得もするが、ヒデヨシの場合は、あまりに大人の事情過ぎた。
今、読んでも改めて思うが、「バリバリ伝説」において、ヒデヨシが事故死する必要はなかった。
ストーリー上の伏線回収というのでもなく、ただただ唐突であり、驚きだけが残った。
物語とは別の理由で舞台を去っていったヒデヨシは、その後、回想場面などが描かれることもなく「バリバリ伝説」の中では第一部のみの存在として忘れられ扱いになるが、なんと終盤、ある事情からGPを放り出して自暴自棄になっていた主人公グンを叱咤激励する役割で、グンの夢の中で再登場する。
きっと作者としても、割り切れない部分、ヒデヨシというキャラに対する申し訳なさがあったのではないだろうか。
私は、このシーンを読んだ時には、嬉しさと驚きが半々だったが、今となっては、良いシーンだと思っている。
ただ、最終回のエピローグでの一言、「グンが追いかけているのはヒデヨシの背中かもしれません」は、流石にどうかなと思った。
しかしながら、高校生編は主人公のグンよりもヒデヨシの物語と言っていい。
「バリバリ伝説」という漫画を、ドカンと高い位置に引き上げたのは、ヒデヨシというキャラあってこそである。
【全力でオススメ】名作「バリバリ伝説」
私が、どうやって「バリバリ伝説」を知ったのかは、この記事を書くにあたり、じっくりと記憶を辿ってみたのだが、どうしても思い出せなかった。
私は、週間少年マガジンの読者では無かったし、誰かに借りたのでもない。バイクに興味があった訳でもない。ただ、1~3巻をまとめて買い、そのあと直ぐに既刊分(確か10巻くらいまで出ていた)を追加購入したのは覚えている。一体、どこから知ったのだろう?不思議だ。
あと、中学生の頃だが、ヒデヨシの愛車、スズキのカタナのプラモデルを買って作ったのも、懐かしい思い出だ。
今読むと、時代背景があまりに違うので、特に前半の高校生編はキツイというか逆に笑えるが、全編通じて中だるみすることなく緊張感を維持し、絵柄の変化もキャラの成長とリンクしているみたいで違和感が無い。
ここではヒデヨシの話ばかりになったが、勿論、主人公グンも負けず劣らずの凄まじい魅力を備えており最高!
昭和の時代、昔の漫画と思わずに、是非、彼の熱い走りと生き様を堪能してほしい!