【セガ社員 奥成洋輔氏】書籍「セガハード戦記」を読んで
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【セガハード】に手を出した人は読むしかない!

久し振りに、活字がたくさんある本らしい本を手に取って読んだ。コミックや雑誌じゃなくて「書籍」。

元々、本を読むことに苦手意識はなく、むしろ好きな方だったが、まー今は何と言っても時間がない。私はマイカー通勤なので通勤中に本を読むことは出来ないし、更に勤務時間も長い。夜は晩酌しているうちに意識を失うことがしょっちゅうだ。

本離れが著しい私だけど、「セガハード戦記」というタイトルの一冊は無視できなかった。

高校卒業後から25~26歳になるまでの7~8年間、私は、セガハード「メガドライブ」と「サターン」に惚れ込み、随分と楽しませてもらったからだ(もっとも、スーファミとプレステも同時に楽しんでいたが‥‥)。

【ゲーム考古学】の先生 奥成洋輔氏が振り返るセガ戦史

筆者が冒頭で触れるように、この本はそれほど堅苦しくもマニアックでもなく、事前知識が無くても置いて行かれないよう上手に綴られている。

「ゲーム考古学」というのは筆者の(半分)冗談だが、テレビゲームが誕生してザックリ半世紀が経ち、第一世代の方々はもう引退していたり、お亡くなりになった方も少なく無いだろう。

更なる進化、深化を続けている「テレビゲーム」は、もう立派な文化、芸術のひとつであるし、「ゲーム考古学」とか仰々しく無くても、その歴史は正確に記され、継承されて欲しいと思う。

そんな肩書を背負ってしまう「セガが好きすぎるセガ社員」奥成氏の行動原理にはとても共感する。

「セガハード戦記」には、ついに敵わなかった仇敵であるソニー・任天堂への恨み言や、セガの当時の判断や方針を後悔するような類の表現はなく、とてもスマートだ

同業者への正直で真摯な評価、自社(セガ)との違いも踏まえつつ、綴られる文言には技術屋さんとしてのプライドも垣間見えて、清々しいというか武士道のようなものが感じられて気持ちがいい。

セガ社員が書いた「セガハード戦史」と銘打つ言葉には、暴露本的な期待もされるかもしれないが、この本には、実は溜まっていたものとか、隠していたものをぶちまけるというような激しい感情の吐露は皆無で、史実に沿って俯瞰した位置から淡々と書かれている。まさに「戦記」と呼称するに相応しい。

ゲーセンの王者「セガ」と家庭用ゲーム機での「セガ」

私は、セガSGシリーズは従兄弟や友達経由でしか触れる機会が無かったし、ゲームギアやメガCDを所有したこともなく、ドリームキャストに至っては画面を見たことがあるだけで未プレイだ。

そんな私は、この本「セガハード戦記」を手に取る資格が無いかもしれない。しかしそれでも、私はセガというゲーム会社が大好きだったし、セガの応援誌になっていた雑誌「BEEP!」を毎月購読した。

それだけ、アーケードゲームでの「セガ」は圧倒的な存在感だった。

特にAM2研チームの製作したゲームは、当時最先端のコンピューターグラフィックを、さぁ、これでどうだ、というくらいな圧倒的なパワーで具現化しており、他のゲームとは一線を画していた。

「ハングオン」から始まった体感ゲームシリーズ、「スペースハリアー」「アウトラン」「スーパーハングオン」「アフターバーナー」「バーチャファイター」は、どれもが異次元空間のようで、私達を魅了した

そんなセガというメーカーに惚れた私は、いちファンとして、コンシューマー(家庭用ゲーム機)の分野でも、セガ・ハードが日本一になること願い、いつしかその日が来るのではないか、いや、そんな瞬間が訪れればいいのに、と祈っていた。

あの、ドリームキャストが発表されるまでは‥‥。

夢で終わった「ドルームキャスト」には「セガらしさ」があったのか?

セガ最後の賭け「ドリームキャスト」は、私には、良くも悪くもセガらしさが希薄に見えた。

確かに、これまでのセガハードに比べ、垢抜けた感は突出していた。これが見た目だけなら良かったが、インターネットのオンライン機能を標準搭載するなど、先見の明としては凄まじいが、それは後年になってから分かることで、当時としては明らかにボリュームゾーンのユーザーの感覚から先行し過ぎていた。

もっと気になったのは、プロモーションの違和感。私の個人的好みは別としても、秋元康氏の手法は、セガというキャラの宣伝に合っていたとは思えない。

「セガなんてダセえよな~」というプレステ対比の自虐手法とか、ここまで開き直ってしまうノリ、ついに脱皮して第二形態なのか?という受け止め方もあるにはあったが、私は戸惑った。

初戦から既に特攻みたいなプロモーション。全開過ぎて既に余力が無い‥‥?

サターンのソフトがそのまま動くのならまだ良かったが、これまでプレステ相手にボロボロになるまで闘い、セガを支えてきたサターンという実績はバッサリと切り捨てられていた。

そんなセガに、私には不安と違和感しかなく、ドリームキャストの購入に二の足を踏み、傍観者になってしまったことを記憶している。

結果として、それから2年でドリームキャストは沈没し、セガはハード事業からの撤退を発表した‥‥。

「セガハード戦記」

読了して本を閉じ、タイトルを目で追う。

「セガハード戦記」

「失敗と敗北ではない、挑戦の歴史がここにある。」

確かにその通りだった。

ファミコンに潰されなかった唯一のハード「SGシリーズ」
欧州市場ではスーファミと互角以上のシェア争いをした「メガドライブ」
例え一瞬でも、セガ史上初の国内No.1を果たした「サターン」
そして、全てを賭けた大博打に出て、未来への萌芽だけを残して轟沈した「ドリームキャスト」

「しくじり先生」とか「カズレーザー」がピックアップするようなネタばかりではなく、セガは国内No.1になるため、天下統一を果たすため、セガの時代を築くために、何度も何度も挑戦を繰り返してきた。

卓越したゲーム開発力と豊富なソフト資産を持ちながら、安牌に見えたソフト供給メーカーに逃げず、あの任天堂とソニーを相手に最後まで家庭用ハードでの勝負を挑み続けたセガ。

その当事者達には心から敬意を表したい。

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