ポップスの傑作アルバム「PANIC ATTACK」
1988年リリース、ユニコーン2枚目のアルバム「PANIC ATTACK」の6曲目。
どのアーティスト、バンドでもそうだが、ブレイクしたアルバムなりシングルの前作というものは、一般的にさほど売れはしなかったものの、内容としては傑作であったことが少なくない。
ユニコーンの場合もそうで、ブレイクしたアルバムで名盤でもある「服部」が、彼らの多様性を示したものであるとすれば、今回紹介する「PANIC ATTACK」は、正統派ポップスバンドとしての魅力に特化した傑作だといえる。
この「PANIC ATTACK」は当時としてはちょっと捻った11曲編成。どの曲もシングルカットできるほどのクオリティを誇り、アルバム全体としての塊感も凄まじく、遊び心豊富なユニコーンが、真面目にポップスに絞り込んで作り込んだ結果が1曲1曲から伝わってくる。
今回は個人的好みから「シンデレラ・アカデミー」を取り上げたが、このアルバムに関しては、全10曲のどれからセレクトしてもOKである。
奥田民生だけじゃないユニコーン
ユニコーンといえば、後にソロアーティスト、また「PUFFY」のプロデュースで大成功する奥田民生が浮かぶと思う。
でも、実は他のメンバー4人全員が作詞作曲できて、なおかつボーカルも出来るという、他では聞いたことがない実力者揃いのバンドだった。
前述したアルバム「服部」以降は、悪ふざけが過ぎたように感じる曲もあり、ちょっと好みが分かれるかもしれない。
しかし、スマートで真面目な曲を作るより、遊び心ある曲を作る方が余程難易度が高いとも思われ、バンドブームだったこの時代を牽引した実力派の一角だったことは間違いない。
そのキャラクター性や詞などから、食わず嫌いの人も多いと思うが、先入観を持たずに聴いてみてほしい。
大ブレイク前夜の「ユニコーン」
ユニコーンは、若い自分が様々なバンドの発掘作業をしていた中で掘り当てた数少ない金塊のひとつだった。
後にシングル「大迷惑」で市民権を得るが、「PANIC ATTACK」の頃は、音楽雑誌のモノクロページでサラッと紹介される程度の扱い。このバンドは後に花開くのか、それとも埋没するのか、まだ音楽関係者にもリスナーにも分からない、岐路に立っていた時期だ。
私は高校2年で、東京への修学旅行中に、よくつるんでいた友人にウォークマンで聴かせたところ「PANIC ATTACK」は彼の琴線に大ヒットした。
「え?なにこれ?スゲエいいじゃん!」と興奮おさまらない彼は、修学旅行から帰る頃には私以上のユニコーンのファンになっていた。
こんなことも学生時代ならではの出来事かもしれないが、こんな感じで支持者が増えていったんだろうなと思うと感慨深い。