【松田優作】元々はマイナーなドラマだった「探偵物語」
1979年リリース、SHOGUNの3枚目のシングル。
…と言われても分かる人はマニアのみ。この曲は、松田優作が主演して人気を博したテレビドラマ「探偵物語」のオープニングテーマだ。
大ヒットした「大都会」シリーズの放送枠での、ハードボイルド・コメディという作風も実験的だが、松田優作が扮する私立探偵「工藤俊作」に関するキャラ設定の凝り具合が楽しく、後に、オマージュした探偵が続々と誕生することになった。
「工藤俊作」のスタイルや主義の例をあげると…
①ファッション 「黒のスーツにカラーワイシャツ」 (白スーツの時もあり)、「ベルトは使わずサスペンダー愛用」
②グルメや嗜好品 「ライターの火力は常に最大」「コーヒーのブレンドにこだわる」「月に1回はステーキなど豪勢な食事を独りで楽しむ」
⑤○○主義 「午前中と日曜日は仕事をしない主義」「職業蔑視はしない主義」「手相は見ない主義」
などなど多岐にわたり、本当に面白く魅力あふれるキャラクター造形で、工藤探偵のことを疎ましく思っている刑事達を手玉に取りながら、飄々と事件を解決していく人間ドラマは、深夜に一杯飲みながら見るのに最高だ。
私立探偵「工藤俊作」は、松田優作の代名詞に
劇中では、アドリブの頻発や本人の地が出たような演技に、「工藤俊作=松田優作」というような見方も強くなされ、その愛すべきキャラクターは、後の様々な作品にリスペクトされている。
名探偵コナンの主人公の名前、ワンピースに出てくる海軍大将の「青キジ」の外見などが有名だが、他にも多数あり、どれだけオマージュされたのか数えられないくらいだ。
有能でお洒落、不真面目でダークサイドの人間、ちょっと変人で付き合いにくいけど義理人情には厚い。
そして、気楽に探偵業をしているようで実は、寂しい影の部分を持っているところが一番のポイントだ。
リドリー・スコット監督の映画「ブラック・レイン」で準主役の悪党を演じ、ハリウッド界に着目されたにもかかわらず、若くして病気で他界した、松田優作本人のイメージに限りなく近かった。
「BAD CITY」に惹かれた、幼かった私
さて、この曲の詩は全編英語とはいうものの、半分くらいは「BAD CITY」と連呼しているような曲なので、私のような英語能力に乏しい者でも問題なく聴ける。
軽快というよりは軽妙さを感じさせる曲調で、ドラマ「探偵物語」との親和性が非常に高い。
私はあまりテレビドラマを見ないで育ったが、このドラマは大好きで、再放送のたびに嬉々として見ていた。
初めて見たのは、多分、中学生だったと思う。その時すでに、「この始まりの曲カッコいいな!」と思っていた。幼くて馬鹿な私は、「オープニング・テーマ」という言葉すら、まだ知らなかった。
夕方16時か17時の枠でやっていたはずで、学校帰りで、働きに出ていった母が置いて行ってくれているおやつを食べながら真剣に見ていた。
中学生というのは、外を走り回って鬼ごっこをするようなガキんちょではないが、かといって青年でもないという微妙な年齢だなと、今になってみると余計に強く思う。
あの頃、どんなことがあって何を思い何を考えて毎日過ごしていたのか…?当時の友人達と話でもしなければ思い出せなくなってしまった。
今、中学生になった息子を眺めていると、随分と子供に見える。自分もああだったのだろうか?今度、親に聞いてみたい。