私に降りかかった”クラッシャー上司”
私のかつての上司(「うつ病物語」の役員A)は、発想力や行動力に秀でた人物で、入社後の30年間を、総務→営業→総務と経験し、その後は役員になった人物です。
しかし、事務の女性と若手営業マン1~2名の少数編成だった営業所の所長だった10数年間で、彼の下についた営業マンは2年と持たずに次々と彼の元を去り、退職4名に異動が2名で計6名。異動となった2名も、自らの限界を感じた退職覚悟の本社への直談判を経たもので、結局、誰一人として彼の部下として育った人はいませんでした。
今(2019年)から10年ほど前、私がまだ課長代理だった頃、そんな問題を抱えた人物が、営業所の閉鎖により私の部署の上司としてやってくることになりました。当時、私は彼に対して苦手意識がちょっとあったし、色々なハナシも聞こえていたので、単純に「嫌だな」と思っていましたが、それほど深刻に受け止めてはいませんでした。
「…まあ、俺は楽観的な性格で深く思い込むこともないし、役員Aがいくら特殊な性質だったとしても、続々退職していった人達みたいなことにはならないだろう。」
今となっては笑うに笑えない話ですが、当時は本気でそう思っていたのです。私は、真面目な性格だと自覚してはいましたが、と同時に、自分にある”適当でお気楽な性質”に変な自信?も持ってました。
…しかし、役員Aが直属の上役についてからの2~3年間で、私は徐々に元来の自分を見失うようになり、その後、更に2~3年をかけてじわじわと精神状態が悪化、知らないうちに”うつ病”が進行してしまい、ついには休職に追い込まれました。
私が対峙した「クラッシャー上司」とは?
クラッシャー上司というのは労務用語で、プレイヤーとしては優秀で実績も残すものの、その一方的で独善的な性質から、部下を次々と潰して退職やうつ病に追い込むタイプの人を差す言葉です。
私は、この言葉を、うつ病になるまで知らなかったのですが、体調思わしくなく「うつ病、診断」だの「パワハラ、定義」などと無意識に検索をするようになっていた時に偶然目にし、「…!これだ、あのヒト、絶対これだよ…。」と確信したのです。
パワハラの場合、暴力を伴ったり、あからさまに虐めたりと周囲にも分かりやすい行動を起こすので、問題が表面化しやすい面があります。しかし、クラッシャー上司の場合は、職場では「アノ人、ちょっと度が過ぎてるよな?」程度に流されてしまうので、なかなか問題視されません。それはなぜでしょうか?
その理由はひとつ。
目立つ実績を次々に挙げるから…!
役員Aは、確かに分かりやすい、形のある実績を上げる人物です。その推進力とエネルギーは社内ではずば抜けていて、色々と騒動も起こしましたが、それを払拭する活躍もあり、結果、役員に登用され、今は社長に次ぐNo.2。社長以下の役員達は、役員Aに頭が上がらない節がどこかにあります。
更に役員Aの場合は、非常に弁が立ちます。自身にとって都合の悪いハナシは上手く脚色し、いかにも正当性があるように報告。また歩が悪い場面ではサッと頭を下げ、本気で(?)反省もし、しばらく大人しくするような賢さにも長けています。いい意味でも悪い意味でも”仕事はデキる”これがクラッシャー上司の特徴です。
きっと私をうつ病に追い込んだ一件も、そりゃ会長や社長から説教や尋問めいたことはあったでしょうが、その時は、反省の姿勢を前面に出して上手いこと切り抜けたに違いないことは、休職中の私の頭でも直ぐに想像出来ました。
…なので、部下をうつ病に追い込むのは同じでも、「クラッシャー上司」は「パワハラ上司」よりタチが悪いのです。
クラッシャー上司による、うつ病を疑っていたら…
比較的大きな会社で異動が可能な時
人事異動の時期まで我慢せずに、直ぐに異動すべきです。クラッシャー上司得意の洗脳で貴方の精神が歪められる前に、とにかく離れことを強くお勧めします。異常者と付き合えば付き合うほど、貴方は正常な判断力を失って、どんどん深みにハマり、本当にうつ病になってしまうでしょう。
中小企業のため異動が無理な時
こういう場合は、もう恥も外聞を捨てて直ぐに病院に駆け込み、うつ病の診断書を貰った方がいいです。睡眠障害や集中力の欠如、朝の調子が一番悪く夕方に少し持ち直す、休日に全く行動力がない、など、既に普通ではない症状が出ているハズ。
病院では、「貴方は、まだうつ病ではない。」と診断されるかもしれませんが、クラッシャー上司と付き合っていれば、絶対に症状が進行します。信頼できるパートナーや友人のアドバイスも仰ぎながら、2回目、3回目、と病院に通うことで、うつ病の早期発見に繋がります。結局のところ、自分の身は自分で守るしかないのです。
クラッシャー上司の更に上に相談する
正攻法ですが、確かにこういう手もあるにはあります。しかし、貴方の苦しみの原因が、クラッシャー上司である場合は、まず上手くいかないでしょう。会社組織は、実績を出す人を外すという選択肢を、色々と理由を付けて渋るからです。
「そうか、それはキツイな、でも、もうしばらく頑張ってみろ。」とか「分かった、このことはちゃんと伝えて改めさせるから。」などと、残り少ない勇気を出して相談したこちらに向かって、穏便な対応を申し出てくるのがオチです。
クラッシャー上司は精神異常者
ここから先は独断と偏見になってしまいますが、クラッシャー上司は、精神異常者だと私は思っています。
例えば、海で溺れている人を見た時、普通の人なら、四の五の言わずに助けに動くでしょう。しかしクラッシャー性質の人は違うのです。
「おい、なんで泳ぎを習ってこなかったんだ。」「俺達の時代は、泳げない奴なんか一人もいなかったぞ。」「ここにスイミングスクールのパンフレットがあるから、後で取りに来いよ。」「違う違う、そんなに手足をバタバタさせるな。」
これが彼らの思考です。潜在的な攻撃気質はあるかもしれませんが、虐待しているとか、そんな気は毛頭なく、悪意も恐らく無いのです。
私は、「いやいや、本当にどうにもならない時には頼っていいはずだ。」と思い込みながら、5年6年と役員Aの下で働いていましたが、ついには、このような結論に辿り着き、心の底から戦慄しました。
こういう上司は、…慕ってついていく人物ではありません。早く見限って離れるしかないのです。