C-C-B「走れ☆バンドマン」
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ロックバンドのインストゥルメンタルな曲

私は、オーソドックス編成のロックバンドの音が一番好きだけど、インストゥルメンタルの曲もかなり好き。

現在のボカロミュージックにも繋がる伝説バンドYMOは勿論のこと、ピコピコ電子音から始まったゲームミュージックは今でも繰り返し聴くし、トランス系のダンスミュージックとか電気グルーヴなんかも良い具合な緊張感で落ち着く。

ただ、これらは当たり前だけど「電子音」過ぎて、私の場合ずっと聴いているとおなか一杯になる時がある。それは本当に僅かな差なんだけど、ハナ差で、シンセ音よりロックバンドが叩き出す生音の方が好きだからだ。

…なので、ロックバンドの音で、ボーカルは入らない曲が一番の好物だったりする。

それは無理だろう、無いものねだりだろう、と一瞬思うけど、実はそんなことはない。最近のバンドは良く知らないが、ロックバンドが奏でるインストゥルメンタル曲ってのは昔から存在している。

立派なボーカルがドーンと居るロックバンドなのに、たまにアルバムに収録されるインストゥルメンタル曲。

サスガに完全なインストゥルメンタル曲となると極少ないが、純度100%のインストゥルメンタルではなく、サビにボーカルのシャウトとかコーラスが入るようなのも含めると、結構沢山ある。

そこでC-C-Bだ。

この振りについてこれない人は、C-C-Bへの愛が足りないと言っておこう。

アイドルバンドだったC-C-Bの素顔

え?何言ってんの?C-C-Bといえば、シモンズの電子ドラムにYAMAHA DX-7という鍵盤シンセを世に知らしめたバリバリ電子音の立役者だし、何よりメインボーカルが3人も居るバンドじゃないか!

そうです、その通りなんだけど、C-C-Bにはその活動後期に(ほぼ)インストゥルメンタルなアルバム曲がある。

アルバムのタイトル曲にもなっている「走れ☆バンドマン」という曲がそれ。

リーダーの2015年の渡辺英樹さんに続いて、2022年12月に象徴的存在だった笠浩二さんが他界してしまったC-C-Bっていう偉大なバンドを振り返ろう。

※以降、敬称略

先ず、バンド名のインパクトは抜群だった。覚えやすいことこの上ない。

…が、当時でもあんまりカッコいい語感ではなく、かといってはっきりダサいわけでもなく、このバンド名は評価が難しかった。数十年経った今でも、それは変わらないように思う。

そんな強い名称インパクトに反して、メンバー5人の中には、際立ったカリスマをまとい、一人でC-C-Bというバンドを日本音楽界のトップに引っ張っていきそうなスーパースターな人物は居なかった。

笠浩二、渡辺英樹、関口誠人、リードボーカルがとれる3名はそれぞれ個性ある歌声で魅力十分だったが、悪く言うとドングリともいえ、誰か一人がずば抜けて上手いとかスゲエとは違う状態でもあった。

そしてアイドルバンドの人気の源でもある、ビジュアルやキャラクターも、フロントマン3名のチーム戦で出来上がっていた(そういう戦略だったのだと思う)。

歌も踊りもビジュアルも派手な超キャラ藤井郁弥を擁するチェッカーズ、ハリウッドスター的で規格外なイケメン吉川晃司、周囲を黙らせる超絶歌唱力の玉置浩二の安全地帯、この強敵達がそれぞれ持つ必殺技に対し、C-C-Bはチームで挑み、互角に戦っていた。

独自路線としてはカラフルなポップス感がC-C-Bならではの武器だったが、それは彼らの本意ではなく「元気なブロークンハート」でカラフルヘアーを止めた時から、C-C-Bはパッと見の鮮やかさを失った。

そして、1987年「ないものねだりの I want you」を最後に、重要なフロントマンの一角だった関口誠人がバンドを抜けた。C-C-Bは、自分達ならではの必殺技を手放し、ロックバンドとしての魅力(あくまで見た目の)を低下させた。

人気バンド四天王の一角だったC-C-Bは、1987年には後続に追い越され、シングルを出しても音楽雑誌のモノクロページでさらっと紹介される程度のポジションに下がっていた。

それは実際には、自らの意志でトップアイドルの地位からロックバンドへシフトしたチェッカーズと変わらないことだったのだが、一般リスナーには、そのように映らなかった。

カラフルをやめ、関口誠人という人気メンバーが欠け、超ヒットメーカー筒美京平氏のプロデュースからも離れたC-C-B。

魅力を構成していた大きな要素が全て外れ、C-C-Bは失速した。世間では、そのように受け取られた。

ロックバンド『C-C-B』

バンドの演奏力。これはあまりテレビや雑誌では語られないし、楽器を演奏したことのない素人にはよく分からないが、ライブでは実力差が色濃く出ると言われている。では、C-C-Bの演奏力はどうだったのだろうか。

当時読んでいた音楽雑誌などからの情報でしかないが、C-C-Bは少なくとも演奏が特別上手いバンドだと評されてはいなかった。

が、勿論、ライブを見るとドライブ感の迸る一流の演奏であり、メンバーそれぞれがプロフェッショナルな腕前なのは間違いない。各バンドによって演奏力に差はあるだろうが、それはプロ同士の非常に高いレベルでの僅かな違いの話だ。

とにかくC-C-Bは、ベストテン番組でアイドルバンドとして人気を集め、曲も売れて賞も獲った。メンバーが抜けて4名になってしまうという出来事はあったが、その関口誠人はソロで成功。

残ったメンバーは筒美京平プロデュースから離れ、自分達の等身大な活動をするようになって、そして現在がある。

「走れ☆バンドマン」というインストゥルメンタル曲には、そうやって駆け抜けた1985年からの濃厚な4年間を、バンドサウンドだけで走馬灯のように表現している。

これを名曲と言わずに何と言えばいいのか。これは、演奏力に長けたバンドじゃなきゃ出来るわけがない。

「走れ☆バンドマン」は、聴いて直ぐに心掴まれたアルバム曲だったが、久し振りにC-C-Bを聴いた私にグッと刺さった曲が、なんとC-C-B初のインストゥルメンタル曲(実際には少しボーカルも入る)だったのだ。

が、C-C-Bの楽曲として、ちょっと不思議な違和感もあった。

「走れ☆バンドマン」は、その勇ましいタイトルに反し「さぁ俺たちはこれからも!」という熱は漂わない、どこか寂しげな曲だった。

何かを振り返っているのか、後悔しているのか?それとも終末に向かっているのか…?

私の中でC-C-Bは、寂しい曲を歌うバンドではなかった

C-C-Bは、このアルバムをリリースした一年後、解散を発表した。

解散を知った私は、「走れ☆バンドマン」のことも忘れてC-C-Bから更に離れていたが、そうか、やっぱりか…、あのC-C-Bがなぁ、と、想像以上のショックを受け、しばらくの間、思い出す度に寂しくなる日々を過ごした。

自分は、C-C-Bにかなり思い入れがあったんだな、と、その時に深く自覚したのだった。

 

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