【鬼滅の刃】煉獄サンは興行収入の歴史を塗り替えるか?
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「鬼滅の刃」超新星爆発!!

コロナ禍の逆風が強い音楽・芸術業界。

一箇所に集まると「密」になってしまうため、ライブや映画館に足を運ぶことはリスクを伴う行為で、何となく足が遠のく世の中に…。

ああ、もう誰かなんとかしてくれ~!

そんな閉塞感が臨界点に達していたのか、この局面で超新星爆発を起こした劇場アニメ「鬼滅の刃」が誕生した。

私は全国公開されて4日目の19日、たまたま休みだった月曜日の朝イチで鑑賞。

「田舎町だし、月曜の朝から映画を見に来るような奴はそんなにいないだろう」なんて思っていたが、チケット売り場は週末とか日曜のゴールデンタイムか?と思うくらいの人出。すっかり驚かされた。

私は、今回の映画の手前まで描かれたアニメシリーズが素晴らしい出来栄えなのを知っていたので、もちろん映画には期待していたんだけど、このストーリーをこれ以上ドラマチックに、またカッコよく描くことは無理じゃないか?と思わされるほどの輝く出来栄え

悲しいシーンではマジに涙がポロポロだし、特に主人公の炭次郎が尊敬する凄腕剣士「煉獄 杏寿郎(れんごく きょうじゅろう)」は、変人だが漢気溢れる頼もしい先輩で、かなり格上の強敵「猗窩座(あかざ)」に単騎で挑む姿は、バシッと決まった絵が連発の上に必殺技である斬撃シーンの美麗さも相まってひたすらカッコいいばかり。

とても悲しいシーンが多くて涙を誘うけど、続けてもう一回見たくなるくらい、鑑賞後の満足感がずっしりとある映画だった。

ジョジョの奇妙な冒険との類似設定

「鬼滅の刃」の基本設定は、荒木飛呂彦氏の有名マンガ「ジョジョの奇妙な冒険」の第一部~第二部に似ているという指摘が有名だ。

確かに、主人公ジョジョの敵は人間から転生した不老不死の吸血鬼で、自分の血を注入することで仲間を増やすことができ、唯一の弱点は太陽の光。父親を殺されたジョジョは、出会った師匠に太陽パワーを操ることが出来る『波紋法』という名の呼吸法を習得し吸血鬼に立ち向かう。

ジョジョの宿敵である吸血鬼「ディオ・ブランドー」は、鬼滅の刃での大ボス「鬼舞辻無惨(きぶつじ むざん)」と同じく、救いようのない超悪人であり性格も同じ系統。

このあたりの設定は、確かによく似ている。けど、似ているのは敵側である鬼の設定だけ。他は、ストーリー展開もキャラクター達も全然違う。

ジョジョの方がストーリーが難解で、戦闘や戦術に凝った魅せ方が多くて絵柄の癖も強い。その分、好きな人にはドハマりする旨味が溢れているが、大人から子供まで男性も女性も~という種類の作品ではない。

鬼滅の刃は、キャラ達の立ち位置も主義主張も一貫しているので、物語がスッキリしていて分かりやすいのが2020年の漫画らしくなくていい。

主人公の性格があまりに異常だったり、信じていた相棒キャラが寝返ったり、死んだキャラが実は〇〇とか、師匠が実は××だった、なんていう刺激的な展開には、実は皆、もう飽きていたのかもしれない。ストーリ上、人がどんどん死んでしまうので苦手な人もいると思うが、爽快感も併せ持つ作品だ。

超大ヒット報道が続く鬼滅の刃…!

私は、こうした大ムーブメントには乗り遅れるかアンチになるタイプなので、「鬼滅の刃」の波に乗っかったのは単なる偶然というか運でしかなかった(というか映画に行く直前まで、ここまで爆発的人気だとは思ってなかった)。

こうして映画も早々に鑑賞し優雅に構えていられるのは、流れに素直に乗っかってみたから故の心地よさ…なのかもしれないが、世間では「キメハラ」などという意味不明なワードも登場し、大ブームは行きつくところまで行きつく様相を見せている。

ここまでの社会現象になると、コロナ絡みがあってこその大ヒット、とか、上映回数が多いから興行収入が伸びるのは当然とか、コラボ商品が山ほど出て節操がないとか、プロデュースが上手いとか、うがった見方をする勢力も出てくるのが嫌なところだ。

興行収入の歴代トップである「千と千尋の神隠し」超えが見えてきたことで、宮崎駿氏にインタビューしている記事を見かけて驚いたが、こうした礼節の無い振る舞いにはホントに腹が立つ。鬼滅の大ヒットに関して宮崎駿氏に一体何を尋ねるというのだろうか。

この「鬼滅の刃 ~無限列車編~」は原作単行本のたった2巻分を120分の映画にしているが、オリジナルエピソードは殆ど無く、初見の方が入りやすいように工夫している程度で原作に忠実だ。

繋ぎを丁寧にしたり演出密度がぐっと濃くなった印象で、製作チームの塊感も熱量も、そして声優陣も見事の一言。背景、表情、動き、音響、CGのどれもが2020年新時代のアニメ水準を具現化してくれたと思う。興行収入の歴代一位を更新するのは間違いないだろう。

それにしても、日本の漫画・アニメ界は順調に熟成が続いているようだ。バトル漫画が得意な少年ジャンプということで、これが80年代だったら、根津子を捕らえた無惨の居るアジトの最上階を目指して、十二鬼月と鬼殺隊の柱が一人ずつ闘う終盤になっていたかもしれない。

とにかくバトルを描きたい人にとっては最高の(安易な)展開で、昔は王道であり鉄板だったんだけど、もう搾りカスまですっかり使い古されて、これは流石にリサイクル不可能。

かと思えば、家族を鬼に殺された主人公が妹を元に戻すために復讐を誓う!なんていう誰にでも思いつくような古典的なお話でも、真新しく感じる極上な作品を産み出せること、またそれが空前の大ヒットになっていることに驚いている。

 

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