若者全てを魅了した小室サウンド!
1988年リリース、TM NETWORKの15枚目のシングル。
TM NETWORKは1987年の「Get Wild」でブレイクし、デジタルロックをこれでもかと体現したバンドだが、何処まで行っても思い浮かぶのは小室哲也。
私が贔屓にしている安全地帯なら玉置浩二、BOOWYなら氷室京介、チェッカーズなら藤井郁也、REBECCAならNOKKO、ONE OK ROCKならTaka…とバンドの顔、パブリックイメージを作るのはリードボーカルなのが通常。
ボーカルをさて置いて、キーボードの小室哲哉が前面に立つTM NETWORKはかなり異常だ。
当時の私は高校生。音楽に関してアンテナが一番張っている時だった。友人達もそれぞれお気に入りのバンドやミュージシャンを抱え、時に宣伝しまくり、時に冗談交じりに攻撃(ディスり)しあったりした。
そんな中、TM推しの友人はもちろん居たが、その友人以外の誰もが、TM NETWORKを正面からディスるようなことは出来なかった。
それだけTMの、いや小室哲哉のサウンドは、新しい音楽、未来志向の音に聴こえた。
研ぎ澄まされたデジタルの音は、とにかく心地よかった。
無限の引き出しを見せた傑作「COME ON EVERYBODY」
この「COME ON EVRYBODY」だが、あまりTMに詳しくない人には、「Get Wild」の直ぐ後に出たシングルのように思われている感があった。
同じ雰囲気のアップテンポであり、よく知らない人がサラッと聴いた感じでは、「Get Wildが売れたから、その線で出した二番煎じ系だな」というやつである。
しかし実際には、「Get Wild」から「COME ON EVRYBODY」の間には、ミディアムテンポやバラード中心に4枚のシングルを挟んでおり、その引き出しの多さには本当に驚くばかりだ。
以降、色々なバージョンが作られた「Get Wild」がTMの代表曲であることに異論はないが、私はこの「COME ON EVRYBODY」を聞いた時に、まだこんなに新鮮味があってカッコいい曲を出せるのかと、TM NETWORK(小室哲哉)の底力に驚嘆してしまった。
TMから離れた後年、曲提供ばかりになった頃になると、イントロからAメロまではいいけどサビがイマイチとか、またはその反対とか、イントロだけカッコいいとか、バランスを欠く曲も増え、全てが整った”小室サウンド”は少なくなるが、この「COME ON EVRYBODY」は完璧。
アレンジに着目して聴いてみると「COME ON EVRYBODY」も「Get Wild」も、パーフェクトなリズムの上で印象的なギターリフが乗っていて、思いのほかロックテイスト。
小室哲哉と聞いて連想する、いかにもなシンセは後方支援に回っていて、キーボードの山に籠って軽やかに鍵盤を叩く小室哲哉イメージとズレがあって面白い。
音楽プロデューサー小室哲哉、その功罪と顛末…
TMの活動を休止し、プロデューサー業に活動をシフトしてからの席巻振りは、もう皆さんのご存知の通り。
その功罪は別としても、小室哲哉は日本の芸能音楽史の筆頭を飾ってもおかしくない存在だと思う。
しかし、そのあまりに大きく肥大した何かは、時の経過とともに彼の内面に侵食し、後年のスキャンダラスな落とし穴として全部返ってきてしまった。
小室哲也の音楽に心酔し、影響を受けたミュージシャンやリスナーは膨大なはずだ。その根幹であったであろうTM NETWORKは今年(2018年)、結成35周年とのこと。
そんな節目の年に「小室哲哉/引退」という最後は残念でならない。 ※後に活動再開
なお、「COME ON EVRYBODY」は、多くのベスト盤に収録されているので探すのに苦労しないが、出来ればTMのナンバリングアルバム「CAROL」の1曲目から通して聴いて、4曲目に登場する「COME ON EVRYBODY」の魅力とその凄みを再発見してほしい。