オタクご用達のデジタルサウンドユニット
PSY・Sは、「サイズ」と読み、私が高校生だった1980年後期に、一部のマニアック気質(=オタク)からの支持が高かったバンドだ。
アニメ「シティーハンター2」の主題歌になった「Angel Night〜天使のいる場所〜」や、OVA「TO-Y」のイメージソングになった「LEMONの勇気」など、アニメの主題歌に採用されることが多かったせいもあるかもしれないが、オタク気質の人種に評価が高かったのは、やっぱりその楽曲に理由がある。
普通のバンドと違うのは、先ずPSY・Sが男女2人のユニットだということ、そして、打ち込みメインで作りこまれた音に、ボーイッシュかつ超絶上手い女性ボーカルを乗せるという、マニアックでピンポイントな方面を狙ったニッチ産業であったことだ。
当時の男女混合編成のバンドは、「REBECCA」や「BARBEE BOYS」が大御所で、その後、「LINDBERG」や「JUDY AND MARY」などが出現。
実は、あの「ユニコーン」も、初期にはキーボードの女性メンバーがいたりしてたし、「サザンオールスターズ」や「米米クラブ」も男女混合だ。
最近では「SEKAI NO OWARI」など大物も多いが、男女2人のユニット(バンド?)となると、かなり貴重。
80~90年代前半には、そんな男女2人のカップルミュージシャンは皆無だった気がする(真相不明)し、その後も「LOVE PSYCHEDELICO」とか、兄妹デュオの「ZERO」くらいしか思い浮かばない。
「PSY・S」との出会い
私がPSY・Sを初めて聴いたのは、高校1年生の時だった。
CDを貸してくれたのは、当時仲が良かった超ゲームマニア。彼は、当時驚異的な性能で日本中を驚かせたシャープの「X68000」の所有者だった。
日本市場を席巻していたNECのPC98シリーズが唯一敗北したのがこの「X68000」であり、当時の価格は40万円以上だったはずで、こんなパソコンを所持している奴はオタク中のオタクだ(誉め言葉)。
そして私はというと、オタク気質をしっかりと持っているくせに、それをなるべく隠したいと考えるタイプの面倒臭い男。
”オタク”でも偏見のない現代と違って、当時のオタクに対するマイナスイメージはハンパなく、如何にそれを隠したり薄めるかというのは、私のような根性のないヘタレなオタクには切実かつ真剣な悩みの種だった。
そんな私に、生粋のオタクが勧めてきた「PSY・S」とは…?
私は、かなり期待して聴いた。
一聴して悪い感じはしなかった…が、残念ながらそれだけだった。もうちょっと反応したかったので粘ったが、私の好みはもっとロック系のギターサウンドだったので難しかった。
唯一「ファジィな痛み」という曲だけが、物悲しいメロディで記憶に残った。
「PSY・S」との再会、そして再発見
それから時が経ち、PSY・Sのことは記憶の中に埋もれていったのだが、後に出会った嫁が実はかなりのPSY・Sファン。
私は嫁のオススメ曲集を聴くことができ、15年振りにPSY・Sとの再会を果たした。
嫁からは、「LEMONの勇気」という、シャキシャキのカッティングギターにベースが効いたイントロで始まる1曲を勧めてもらったのだが、私は一発で気に入ってしまった。ちなみのこの曲は、少年サンデーに連載されていた上条敦士の漫画「To-y」がアニメビデオになった際のイメージソングになっている。
この曲は、スカーッと抜けるようなボーカルに、ギターとキーボードが幾重にも重なる凝ったアレンジで、しかも、ずーっとベースが主張を続けていて聴きごたえのある一曲だ。
それからまた、あっと言う間にに10年以上が経った最近、色々聴き返していた時に、ふと、PSY・Sを思い出し、ファーストアルバム「Different View」の2曲目「From The Planet With Love」を聴いた。
アッ…!
ツボにはまる曲を初めて聴いた時特有のビリっとくるものを久し振りに感じた。
一瞬、スーパーファミコンとかメガドライブ時代のゲームミュージックかと思うくらい、軽快だが悲し気なデジタルサウンドで始まるこの曲は、全編英語詩だが、その繊細な音使いと、シンセとギターの合わせ方も凄く細かいところに神経が尖らせている感じで、聴いていてとても気持ちがいい。
後に、アレンジを変えたバージョンも登場している(こっちはこっちでまた良い仕上がり)ので、PSY・Sとしてもお気に入りの曲だったことが伺える。
80年代バンドシーンの脇というか斜め上の一角を担ったPSY・Sを象徴するような一曲で、昭和の時代感は流石にあるものの、その洗練された音と転調メロディは、YMO等にも通じる雰囲気でスゴイの一言。先入観を外して是非聴いてみて欲しい。