思い出の曲 57曲目 とんねるず「寝た子も起きる子守唄」

B!

私にとっての「とんねるず」

1986年リリース。とんねるず自身が主演した映画「そろばんずく」の主題歌で、彼らの8枚目のシングル。

1990年代後期以降の、ある程度の落ち着きを持ち合わせた後の「とんねるず」に関しては、私は好意的に彼らの番組を楽しんでいたが、実は、1980年代後半から90年にかけての、我が物顔でテレビ界を席巻していた「とんねるず」に対しては、他人にはその理由を説明することが難しいが、密かに強い嫌悪感を抱いていた。

昭和後期のテレビを変えた「とんねるず」という芸人

「とんねるず」の他、「ダウンタウン」や「ウッチャンナンチャン」、また「明石家さんま」や「ビートたけし」といった、今ではすっかりベテランの大御所になった芸能人に対して、当時は、今のような「お笑い芸人」という表現は使われておらず、「お笑いタレント」とか「お笑いコンビ」などと呼称されていたが、1980年代後半、およそテレビを土俵として若者にダントツの影響力を誇っていたのは、何と言っても「とんねるず」だった。

彼らがホームグラウンドとしていたフジテレビも、現在とは違って正に時代をリードしていた時期であったが、1985年から放送を開始した「夕やけニャンニャン」は翌年1986年に人気のピークを迎え、この番組のレギュラー出演者であった「とんねるず」は、その人気の上昇とともに、暴走振りも加速していくことになる。

その詳細な経緯は端折るが、「とんねるず」の人気はバブル気味に膨れ上がり、歌唱力は一般人以下のお笑い芸人が、秋元康と後藤次利コンビによる世相を読みきったようなプロデュースで続けざまにシングルを切り、その全てがヒットするという快挙なのか悪夢なのか分からない実績を残した。

その後、お笑い芸人が番組企画などでユニットを組んだりして、ヒット曲を出すことは珍しくなくなったが、その源流を作ったのは「とんねるず」だと私は思っている。

とんねるずの代表曲は…?

彼らのヒット曲は数多いが、代表曲と言えば何が挙がるのだろうか?

さて、う~ん、どうだろう?

異論はあろうが、私は「雨の西麻布」だと思う。…が、私は、この曲は好みではない。私は全く演歌びいきではないが、この曲がリリースされた当時、「演歌歌謡の世界を若者ノリで踏み荒らしたような曲だ、悪ノリもたいがいにしろ!」…と、偉そうに思った。

では、もうひとつの代表曲、「ガラガラヘビがやってくる」。この曲は、とんねるず初のオリコン1位も達成したミリオンセラーのシングルではあるが、これはもう、私が一番嫌いな種類の悪ふざけが炸裂した下品極まりない曲で、いいのはノリだけで、若かった私はカラオケでは結構歌ってしまった(というか歌わされた)が、こんなひどい曲はそうそう無いと思うほどに、かなり嫌悪している。

とんねるず異色のシングル!「寝た子も起きる子守唄」

作詞:きたやまおさむ、作曲:林哲司、という、とんねるずの楽曲面をプロデュースしていた、秋元康や後藤次利、見岳章といったメンツではないところが先ず目を引くが、ギャグや悪ノリが一切入らない正統派の作りになっている。

曲調も歌詞も、どちらかというとシリアス寄りで、主演映画の主題歌なので真面目路線で行ったのかもしれないが、普通に歌謡曲としての完成度が高い。2019年の今聴くと、バブル景気前夜の日本の喧騒、「ここまで来たら、踊り続けるしかない」という歌詞には、狂乱とやがて訪れる臨界点、その後の顛末を彷彿とさせ、グッと時代感を匂わせる曲でもある。

苦い思い出の曲だが、嫁のセレクトで再認知

この曲のことなど、私は30歳を過ぎる頃には完全に忘れていたが、15年ほど前、嫁が、昔気に入っていた曲のセレクト集を聞かせてくれたことにより、記憶の奥底から発掘されることになった。

…と、同時に、くだらない昔話も一緒に思い出した。実は、私が高校生の頃に毎日聴いていた地元のラジオ番組「ベストテン北海道」のあいうえお順ランキングコーナーで、有力曲が不在の「ね」の回だったある日、私は、今日こそはファンである安全地帯の「熱視線」が1位になると確信していたのだが、結果は、この「寝た子も起きる子守唄」が1位で「熱視線」は2位。「とんねるずのヤロ~」と、頭にきた苦い思い出がある。

正統派で立派にブレイクしたロックバンド(安全地帯)をさて置いて、リクエスト番組で1位を取るほどに、芸人「とんねるず」の人気は爆発的だったのである。

この「寝た子も起きる子守唄」には、”あの頃”の時代感が漂っていてかなり好きだが、1位を取ってしまうほどに凄い曲だとは思えず、どうしても納得出来ない。

 

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