ジャニーズを吹き飛ばす人気だった「チェッカーズ」
1985年リリース、チェッカーズ7枚目のシングル。
チェッカーズと言えば、私と同世代の人なら、当時どれだけの人気を誇ったかよーくご存じだと思う。チェッカーズは当時のアイドルとしてもバンドとしても大所帯な7人組で、少し背が低めで、いかにもヤンチャそうな風貌のリードボーカル、藤井郁弥のアイドル的人気はすさまじく、髪型やチェック衣装のファッション性も相まって、ジャニーズを吹き飛ばす大旋風を巻き起こしていた。
ただし、その絶大な人気は女子限定であって、この時期のチェッカーズに男性ファンは殆ど居なかった。世の男子どもは、女子に大人気だったチェッカーズが作り出した流行の髪型やファッションを真似つつも、彼らの楽曲は「あくまでアイドルの流行曲」として扱い、距離を置いていた。
この「俺たちのロカビリーナイト」は、前々作である1984年の「ジュリアに傷心」で人気の頂点に達した既定路線を引きずった後期の作品で、チェッカーズの歴史の中では狭間に位置し、事実、1986年には早くも「NANA」で自作曲シングルを繰り出し、アイドルからアーティストへシフトしていく。(チェッカーズが男性人気を獲得していくのは、「NANA」以降になるが、ここでは触れない。)
チェッカーズに男子は触れてはいけない‥‥
さて、メンバー達のフィンガースナップ(指鳴らし)で始まるこの曲、実は、私が自分の小遣いをはたいて買った初めてのレコード。
確か中学2年の時だったと思うが、なぜか、弟と二人でレコードショップを訪れた私は、当時700円と中学2年には高価だったレコードを、あまり迷わずに購入した。テレビのベストテン番組で見たこの曲を、それだけ気に入っていたのだと思う。(ちなみに、弟が購入したのは安全地帯の「悲しみにさよなら」であり、最強推し曲「ノーコメント」の話に繋がる。)
しかし、当時のチェッカーズは完全に女子のものであり、男子が手を出すようなものでは無かった。ここら辺が、同じ超アイドルでも後のSMAPや嵐と全然違う。男・女とハッキリ区別する時代だったせいかもしれない。
テレビのチェッカーズを聴いて口ずさむ程度なら問題ないが、レコードを買う行為は「チェッカーズのファンです」と公言することになり、男子にも女子にも好奇の目で見られるのだ。
カッコいいなあと思って買ったレコードだが、14歳の私にはそれを公然と表明するほどの度胸がなく、弟を口止めし、ごく限られた友人にだけレコードを買ったことを話し、秘密にした。
‥‥が、中学生のそんな秘密が長く守られるはずもなく、友人が口を滑らせたか、弟への突撃取材のどちらかによって直ぐにバレてしまった。
男子である私がチェッカーズのレコードを買ったという事実はクラス中のトップニュースとして扱われ、女子からは「誰のファンなの?」と好奇の目を向けられ、男子からは「なんでチェッカーズ?」と冷ややかな視線を向けられ、随分とからかわれた。
当時は、男子でチェッカーズを本気で支持するものなど皆無と言っていい状態だったので無理もない反応だった。
チェッカーズはアイドルです!
私はその後、自他ともに認める安全地帯ファンになっていくのだが、初めて買ったレコードは安全地帯の代表曲ではなく、なぜかチェッカーズ。この記事を書くにあたり久し振りに聞いてみたら、「ロカビリーナイト」なんて言う割にはあっさり爽やかな曲。1985年7月と真夏のリリースなので、爽やさを持たせているのかもしれない。
「俺達のロカビリーナイト」は、同時期に出された、安全地帯「悲しみにさよなら」、中森明菜「SAND BEIGE」とベストテンを争い、1位も複数回獲っているが、ファンでもあまり印象に残っていないと思う。
個人的には好きだけど、楽曲自体のポテンシャルやテンションが、同じ作詞作曲コンビで作った超傑作「ジュリアに傷心」には到底敵わない。現状維持することが主目的の、余勢を駆った一曲というのが少し寂しいところ。
アイドルでいることに限界が近付いている彼らを誤魔化すように「チェッカーズはアイドルですよ!」とアピールした一曲かもしれない。