「日本人」と「ベトナム人」の味覚の違いとは?

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箸仲間であるハズのベトナム人の味覚

私の職場には、ベトナム人実習生が80名以上いる。その全員が20歳から30歳前半までの若い女性だ。

彼女達の多くは、今、夜勤に従事しているため、会社が支給する夜勤弁当を食べており、その管理を私がしている。

ベトナム人が実習生として会社に来る前は中国人が来ていたのだが、その頃から、外国人である彼女たちの食事の面倒を見るのは、言葉の壁に次ぐ難問のひとつだった。

ベトナムも箸を使って食事をする文化圏なので、私達日本人とは箸仲間のハズ…なのだが、調理法や味付けの好みは、日本人とは随分と違う。

ベトナム人は辛い味が好き???

何となくのイメージで「ベトナム人なら辛い味が好きなんだろう」と思う人が多いんじゃないだろうか?

確かに彼女達は、何にでもチリソースをかけたりしている。生春巻きのソースや、ベトナムの鍋をはじめ「酸っぱい+辛い」ような味付けの料理も多い。

だから「辛い味が好き」というのは間違いではないが、その辛さレベルは大抵の日本人が食べても大丈夫な程度で、それほど刺激的な辛さではない。

日本の激辛カレーや中国料理の四川麻婆豆腐の方がよっぽど辛い。単に辛けりゃいいということではなく、正解とは言えない。

日本人が大好きな魚の刺身は大抵のベトナム人が食べないとか、そのくらいは知っていたし、彼女達の正月祝いに招かれてベトナム人の作った本物のベトナム料理をご馳走になった経験はあったが、ちょっと考えたくらいではベトナム人の味の好みは見当もつかなかった。

そんな中、ベトナム女子達の弁当を、日本人が作る味で、日本人の夜勤者もいるので共通メニューで、さらに依頼している弁当業者が対応できる範囲で…、と考えると、なかなか難しかった。

「ま、彼女達が喜んで食べてくれる弁当に(なるべく)してあげよう。」昨年までの評判があまりよくないことを知っていた私は、弁当改善に向けて考えることにした。

野菜が好き、カレーは嫌い、魚介類も平気

私自身、少しの期間、夜勤に入ったことがあるので、どんな弁当なのかは大体知っていたが改めて調べてみた。すると、「カレーライス」「鶏唐揚げ」「ミックスフライ」「トンカツ」「ハンバーグ」「牛丼」ざっと、この6種類だった。私は揚げ物と肉類ばかりなことに驚き、弁当業者の担当部長に電話を入れた。

私「…あの、毎日の夜勤弁当なんですが、なぜこんなに揚げ物や肉料理ばかりなんでしょうか?」

部長「え~、はい、そちらからの要望で、魚介類は一切ダメと伺っていたもので…。」

私「えっ?そうなんですか?」

部長「はい、逆にこちらとしましても、メニューをもう少し何とかしたいなと、申し訳ないなと正直思っていたところなんですが…。」

早速、弁当業者の部長を会社に呼び、ベトナム女子達を全員集めて聞き取りを実施した。すると、揚げ物ばかりで不満があること、魚介類は殆ど平気なこと、もっと野菜が食べたいこと、カレーライスは大嫌いなこと、ハンバーグやミートソースといった挽肉料理も苦手なこと、など、色んなことが分かった。

これは本当は総務の管轄で、前任は一体何をやっていたのだろうと思ったが、早くに気が付いて良かった。

直ぐにカレーライスを廃止し、野菜炒めを追加したりして、当面の不満は解消された。ベトナム実習生からは取り合えず喜ばれ、私は安堵した。

日本人が好きな中華丼と親子丼はどうか?

その後に実施したアンケートの結果で、野菜といっても生野菜ではなく加熱調理した方が好き、といった細かい点も分かり、弁当事情は改善されてきたのだが、バリエーションが少ないという大きな問題が残っていた。

それも仕方のないハナシで、ベトナム実習生を考慮して日本人には全く問題ない「カレーライス」とか「ハンバーグ」を除外したおかげでラインナップを削らざるを得ず、やっぱり5~6種類程度の繰り返しになってしまっていたのだ。

私が弁当業者にアンケート結果などを伝えて相談すると、弁当業者の部長はこう言った。

「…では、中華丼とか親子丼をやってみましょうか?」

大抵の日本人なら好物に挙げられるメニューだが、ベトナム女子達を思い浮かべるとちょっと危険。しかし一方では牛カルビ丼が好評という実績もあった。私は少し考え込んだ末、GOサインを出した。

中華丼と親子丼、大失敗に…

そして、中華丼、親子丼と、2日間のチャレンジメニューを実施したところ…。

「ワタシたち、これ食べられません~」

「…美味しくないデス」

「このお弁当はダメです~」

といった反応のオンパレード。フタを開けずに全く口を付けない者も多く、ビジュアルからしてダメな感じで、中華丼は特に「あん」が苦手のようだった。

私は悪い方の予感が的中してしまって落胆したが、親子丼に関しての彼女達の返答はこうだった。

「卵も玉ねぎも鶏肉も好きな具材ですが、この味付け…というか、ご飯にかかっていて味が全部しみ込んでいるのがダメです。」

私は、この言葉を聞いて、ベトナム人と日本人の決定的な違いに気が付いた気がした。

日本人が大好きな「〇〇丼」ベトナム人は苦手!

日本人は、ご飯の上に何かを乗っける「〇〇丼」が大好きで、定番の天丼やカツ丼は元より、各都道府県や地域で様々な「名物丼」がある。納豆やフリカケもご飯の上にかけるという点では一緒かもしれない。

とにかく日本人は、ご飯そのものも好きだが、ご飯を美味しく食べるための工夫のバリエーションが半端なく多い。そして、ご飯と具材、そして出し汁などを混然一体とさせた複雑な味を堪能するタイプが主流だ。

ベトナムも米が主食なので、チャーハンのベトナム版もあるし、焼いた鶏肉や豚肉を、白いご飯の上に乗っけたりする料理はある。しかし、それは日本で言うところのワンプレートランチみたいな感じで、日本の「〇〇丼」とはそもそものコンセプトが違う。

”白いご飯”しか知らないベトナム女子達が、「中華丼」や「親子丼」に対して強い拒否反応を示すのは無理もないことだったのだ。

ベトナム人の弁当課題、一応の終結…

弁当業者の都合もあり、結局、それ以上のメニュー改善は出来ず、ソコソコの状態での決着となってしまった。外国人の食事問題はやはり難しい…。

今回は、ベトナムの若い女性達しかリサーチしていないので、性別や世代が違えば変わってくるかもしれないが、彼女達の場合は凄くシンプルで、野菜でも肉でも、塩味だけの蒸し煮とか、そういったものを好むようだ。

日本人が、世界各国の料理を日本流にアレンジ、またはオリジナル以上に凝った料理にしたりして楽しんでいることを考えると、随分と違うものだなあ~と思わされた一件だった。

 

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