池田聡…、独特の立ち位置のミュージシャン
1986年リリース、池田聡のデビューシングル。
私の嫌い(苦手)なタイプの歌として大まかに2種類ある。ひとつは「応援ソング」と言われるジャンル、それと「バラード」だ。
特に「壮大なバラード」となると、嫌いレベルが更にアップする。
で、この池田聡はバラードも歌うが、得意とするのはミディアムテンポでポップスで、どちらかというと女性向けな曲が多いシンガー。
その綺麗でクリーミー?な歌声はなかなか個性的で、カフェラテのようなほのかな甘さは彼ならではの魅力。
アベレージヒッター「池田聡」
私としては、池田聡が「モノクローム・ヴィーナス」で好調なデビューを飾った頃、自然にいい曲だなと好印象を持ったにもかかわらず、きっとこの人は、後々”壮大なバラード”を歌ってくるタイプではないかと決めつけ、先走って警戒していた時期があった。
事実、次作はバラードの「j.e.a.l.o.u.s.y」。
ほら見ろ!バラードだ…!
が、しかし、「j.e.a.l.o.u.s.y」は”壮大な”という感じでは全くなく、ちょっとお洒落でムーディ、結構好みだった。
うーん、おかしいな。もう少し先かな、と変な期待を持っていると、3作目は「濡れた髪のLonely」という「モノクローム・ヴィーナス」路線で、これまたスマッシュヒット。
池田聡は、「モノクローム・ヴィーナス」で示した自らのキャラを大きく変えることなく、坦々とシングルをリリースしていく。
超大ヒットはないが、コツコツとセンター前や右中間にヒットを飛ばすような、アベレージヒッター(シンガー)としてチャートの常連さんになっていった。
池田聡は”壮大なバラード”をついに歌わなかった
結局、池田聡は、「月の舟」や「マリッジ」といった、女性に大人気のバラードを歌うことはあっても、私が毛嫌いするような”壮大なバラード”を歌うことはなく、90年代に入ってもドラマ主題歌やCMソングで、コンスタントにヒット曲を連発していった。
やはり先端は洋楽だ、ロックだ、ダンスだ、ラップだと、従来からの邦楽(歌謡曲)を下に見るような風潮があった時代に、ポップスというよりも日本の歌謡曲に軸足を置き、自作したり、職業作家と組んでみたりしながら、新しい切り口を構築していく落ち着いた音楽活動。
ミュージシャンという職業として、一般人でも何となく想像できる姿を池田聡を体現したいたように思う。
気が付いたら私は池田聡ファンになっていて、アルバムやシングルを複数枚所持していた。
なお、「モノクローム・ヴィーナス」の他、「j.e.a.l.o.u.s.y」の原曲(歌詞違い)である「NO APROGY」を収録しているデビューアルバム、「missing」は、非常に完成度が高くとてもデビューアルバムとは思えない。名盤である。