【永遠のロッカー】吉川晃司という存在
1986年リリース、吉川晃司7枚目のシングル。
デビュー曲「モニカ」で大々的に登場した吉川晃司は、ド派手でヤンチャなイメージを押し出したプロデュースで一気にトップアイドルまで昇りつめた。
が、この「キャンドルの瞳」の前シングル「RAIN-DANCEがきこえる」で早々に脱アイドル路線に舵を切り、そこからみるみるうちに自作曲メインのアーティストに変化していった。
1980年代中期は、まだ日本の音楽界が「歌謡曲」中心であったために、歌謡曲とロック(当時はニューミュージックとも表現された)の境界線上に位置して、アイドル的な扱われ方をされつつ、抵抗してもがいているミュージシャンやバンドは数多かった。
当時では、チェッカーズ、安全地帯、C-C-Bなどがその代表例だったが、吉川晃司はソロ歌手であり、ちょっと前の世代の沢田研二的というか珍しい存在だった。
現在でも第一線で活躍するミュージシャンだが、「ロッカー」という表現の方がしっくりくる。
初めて吉川晃司をテレビで見た時は、「随分と無茶苦茶な動きで歌う、とっぽいアイドルだなあ」と思った程度で、特に惹かれなかった。
【原田龍二が作曲】キャンドルの瞳
しかし、この「キャンドルの瞳」をテレビのベストテン番組で披露した際には、当時らしいチャラチャラしたスーツを着崩して、派手なステップで踊る姿に見惚れてしまった。
原田龍二が作曲した変化球な曲調も好みではあったが、踊る姿に見惚れる、というのは私にとって初めての体験だった。とにかく「スゲェ!」を通し越して、カッコよさに惚れてしまったのだ。
♪「ドレスの裾を 躍らせて はしゃいでくれ バースデー」
というAメロ「ドレスの裾を 躍らせて」のところで、吉川晃司は着ている(というよりも羽織っている)ジャケットに手を添えてヒラヒラさせるのだが、何とも挑発的で色気もあり、サングラス越しのツリ目がキラーんと光るようでイカしていた。
歌が上手い(技巧的に)というミュージシャンではないが、癖になる巻き舌と声色はまごうことなきイケメン風で、とにかく「映える」人だった。
「キャンドルの瞳」は自作曲になる手前の過渡期のため、原田龍二が曲を提供、作詞は安藤秀樹と、両シンガーソングライターにより出来上がった作品で、歌謡曲っぽさがいい塩梅で入っていて超好み。
吉川晃司ならでは、一過性のダンス
彼のダンスは曲に合わせて作り込んだ「振り」ではなく、リズムに乗せた身体が自然に跳ねるような一過性のもので、大よその型はあっても、テレビで見る度に違う動きをしていた。
吉川晃司のダンスは、一流のダンサーやダンスグループが練習を重ねた巧さとかキレとは違う、都会的なビート?を彼なりに窘めるような、軽くいなすような、「こんなモン余裕だから」といった”上から感”に溢れていた。
ダンスが巧い!ではなく、吉川晃司ならではが迸っていて、ただただカッコいい。
吉川晃司が、その後30年以上に渡ってロックミュージシャンとして支持され続けてきたのは、私のような一般人が、ひたすらカッコいい彼のどこかに憧れ、また惚れてきたからではないかと思う。
ちなみに、2014年にリメイクされているバージョンは、オリジナルをベースにしながらもギターが全面にフューチャーされていて、これまたロック感の増した仕上がりになっている。是非、聴いてほしい。