寛解⇒回復して3年経っても病気の傷跡は消えていない
休職するほどのうつ病を患っても、そこから職場復帰して数年も経てば、自分はすっかり元通りだ、もう大丈夫だと誰もが思うでしょう。
長く苦しんだからこそ、そう思いたいという気持ちも分かります。
しかし、残念ながら、そうではないと私は言いたいです。
病気によって傷ついた精神(脳)は、回復から数年経ってすっかり元通りのようであっても、実は発症前よりも敏感で繊細なものに変化しており、外的刺激の感受性がアップしていると同時に、脆くなってもいるのです。
うつ病経験者は人事異動などの変化に弱くなっている
会社員がどうしても避けることができない出来事は色々ありますが、特に大きな状況変化は
1.人事異動による変化
2.昇進昇格や降格による変化
この2つに集約されるでしょう。
この2つは本人にとって非常に大きな変化なのにもかかわらず、基本的に拒否権が無く、いくら不本意であっても受け入れるしかないため、職場環境の変化ストレスが一過性ではなく長期に渡る場合が多いです。
嫌なことを我慢しなければならない、何とか受け入れなくてはならない、というのは健康な人にとっても消化するまでに多くのエネルギーが必要ですが、うつ病経験者の場合は、未経験者に比べて、その消化サイクルを上手く回せなくなっています(全員に当てはまるものではありませんが)。
順調に回復してきた人ほど、この事実を自覚していないことが多く、ここで気が付くことになります。
寛解から回復して数年経って元気になったはずの自分が、実は元通りではない?と実感する瞬間。結構、ショッキングです。
環境変化を上手く消化できない自分に対しての苛立ちと焦りが不安に繋がり、独りで延々と悩んでしまい、徐々に調子を崩してしまうのです。
上司へ正直に話すことが自衛策
さて、本格的に沈没する前にどうするかですが、こういう場合は、上司に全てを話して理解者になってもらいましょう。
その上司が共感してくれれば最高ですが、そこまでいかなくても大丈夫です。上司に、自分の精神状態を情報としてインプットしてもらうことが一番の目的です。
上司としても、部下の状態は少なからず気にしているものです。特に現代は、ハラスメント問題とか、部下のエンゲージメントをどう向上させるかといったことが、経営の大きなファクターになってもいます。
こうした部下からのSOS発信は、上司にとって大事な情報であり、こちらが思うよりも響くものです。業務上の配慮をしてくれるでしょうし、人生相談めいた雰囲気になって、互いの信頼関係が深まる切っ掛けになったりもします。
また、こちら側は、上司に話すことで思っている以上にスッキリします。行動を起こしたことで気分的に次へ進むのです。
「言っても仕方ない」「仕事なんだから我慢しよう」「時間が解決するだろう」
こういう考え方をして我慢すると、うつ病の再発がグッと近付きます。それを思い出して、先手を打って自衛しましょう。
上司に話す時のポイント
こういうチャンスはしっかり活かさないと意味がありません。伝えることはしっかりと、またこの機会を使って上司に印象付けようという強い気持ちも必要です。
そのためには‥‥
1.配偶者や肉親、親友など、心から信頼できる人に話をして整理しておく
2.伝えたいことは事前に何度も考え直し、メモやスマホなど使って文章にする
3.上司に話す時は、まとめた文章を手元に置いて、その内容に沿って忠実に話す
4.元うつ病、まだ病気を引きずっていると思われたくない、という考えは捨てる
1、2、3は、実際に上司に話す時の心構えですが、それに加えて4が一番重要なことです。
私の場合、上司の友人にうつ病(躁うつ病)の方がいて、病気への正しい理解があったため、私からの説明をしっかりと受け止めてくれました。
まとめ
病気の解説書には「うつ病は完治しない」と書かれているし、主治医からは「とたんさんの場合は一生のお付き合い」と言われていても、私のケースは完治だろう、皆、慎重すぎるなぁ、なんて思っていたのです。
しかし、人事異動を切っ掛けに、改めて病気に向き合うことになりました。
うつ症状ではないにしろ、不安定で低空飛行が続くメンタルに危機感を覚えた私は、新しい上司に対し、現在の心境を正直に話すことを考え、妻に相談。
妻からは、「それがいいと思うよ、今さら無理したりカッコつけたって仕方ないんだし」と賛同され、早速上司に時間を取ってもらって心中吐露しました。
結果、ひとまず理解してくれたと感じた私の気持ちは随分と楽になり、人事異動のストレスを上手く消化して切り替えることが出来ました。
出来れば言いたくないというのが正直な気持ちでしょうが、私達はもう既に、うつ病になったことのある経験者なのです。
変化している自分を受け入れ、周囲にうつ病のリアルを伝える意味でも、上司に現状を伝えて自分を守りましょう。