蠣崎弘+”r”-project「邪魔はさせない」
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その昔、アニメ主題歌の位置付けは低かった

1988年に放送されたアニメ「F」のエンディングテーマ曲。

沢向 要士が歌うオープニング主題歌「F」も爽やかツッパリSONGで悪くないが、この「邪魔はさせない」の方が高評価で、存在感のあるカッコいいアニメ曲、知る人ぞ知る逸品として時折語られている。

そもそもアニメーションは、その誕生当時は「子供のもの」、その後も「子供とアニメおたくのもの」という位置付けで、テレビ番組の中では別枠というか格下のような扱いだった。

そしてアニメの主題歌は、アニメ専門の歌手が作品にバッチリ合った曲を歌うのが普通で、それはもう独自の魅力に溢れていた。

「マジンガーZ」や「コンバトラーV」の水木一郎、「宇宙戦艦ヤマト」「銀河鉄道999」のささきいさお、「キャンディ・キャンディ」「あしたへアタック」の堀江美都子、「エースをねらえ!」「あらいぐまラスカル」の大杉久美子。

私は、作品によっては微妙に下の世代ではあるが、再放送でバッチリ堪能したアニメだ。このお方たちは後にアニソン四天王と呼ばれ、この4名で70年代のアニメソングの80%を占めるんじゃないかと錯覚するくらい数多くの楽曲を歌っている。

これが80年代に入ってガラッと変わったんだけども、四天王の作品は繰り返し再放送されていたし、その時代からそれほど年月も経っていなかったせいか、世間では、アニメの歌を歌うことは一流ミュージシャンの仕事としては認知されず、アーティストのランクを下げるイメージすらあった。

杏里「CAT'S EYE」の出現!

しかし、アニメ作品がどんどん成長していくなかでアニメソングも細分化しつつ進化を続け、そしてついにエポックメイキング的な作品が誕生する。

1983年の杏里「CAT'S EYE」。

後の「CITY HUNTER」が大当たりした北条司が描くデビュー作がアニメ化された時の主題歌。漫画「キャッツアイ」は面白かったけども正直、ちょっと野暮ったいところもあった作品だが、この主題歌のお陰でグッとお洒落になったと言ってもいい。

アニメに詳しくなかった杏里自身も受けるかどうか戸惑ったというこの曲は、初動こそ鈍かったが最終的に130万枚を売り上げ、オリコン1位、ベストテン番組での連続1位、年間チャート6位という偉業を達成。

「たかが漫画アニメの曲」という穿った壁が崩れ、日本映画やテレビドラマの主題歌と何ら変わらないことを証明した出来事だった。

この大成功を皮切りに、アニメソングの格下感は払拭され、有名アーティストが全力で手掛けた一般邦楽と差のない楽曲があてがわれるようになっていった。

安全地帯のギタリスト「武沢豊」

で、この「邪魔はさせない」。

「CAT'S EYE」が大ヒットした1983年。その年末に「ワインレッドの心」で大ブレイクを果たした安全地帯。

玉置浩二の同級生でギターの武沢豊が、安全地帯が活動休止していた期間に蠣崎弘というボーカリストと「蠣崎弘+”r”-project」なるユニットを結成、そのデビューシングルがこれだった。

安全地帯にはギターが2人いるが、武沢豊は、チャキチャキシャリシャリのカッティングやリズムカルなプレイを得意とするギタリストで、安全地帯の繊細で洒落たサウンドを作っていた人物と言われている(もちろんギュイーンなギタープレイもする)。

この「邪魔はさせない」リリース当時のインタビューでは、「大ヒットはいらない、スマッシュヒットがほしい」と語っており、玉置浩二がソロ&俳優業で活躍しているのを尻目に、自身としての音楽的成功を目指しているのかなと思ったりした。

「邪魔はさせない」のギターはサスガに武沢ギターなので、安全地帯でいうところのアルバムⅤやⅥの音に近いが、サウンド全体としては、よりデジタルでビートを効かせたデジロック系。

安全地帯とはまた違い、汗臭さゼロ&引き締まった硬質感があり、今聴いても80年代感はそんなに漂わない。平成のデジタルサウンドと遜色なく、武沢氏の先進的な音作りとともに力の入った一曲なのがビシビシ伝わってくる。

時代感はあるけど‥‥ちょっと刺さる作詞

一方、詩はAメロで「パッション」「クラクション」「アクション」「ファッション」と韻を踏んだり、「乾いた刺激は欲しくない」という感じで、全体的には時代感が出てしまうんだけど、ポイントでグッとくるものがある。

武沢豊が絡んでいることと「邪魔はさせない」というタイトルのせいでなんとなく安全地帯(=松井五郎)な雰囲気があるけど、実際の作詞は松井五郎ではなく、「小林まさみ」というお方。

‥‥知らないな。

他にどんな作品があるのか検索してみたが、ネットで得られる情報では、有名な曲はなく作品数も少ない。石川秀美のアルバム曲とか、森口博子「夢がMORIMORI」のC/W「水色のくちびる」を手掛けた方だということ以外は分からなかった。

どうやら作詞業で成功した方ではないようだが、サビの手前のBメロでは

時計仕掛けの暗闇の中、はぐれちゃいけない
決して誰にも邪魔はさせない
燃え上がるこの気持ち

という言葉が綴られており、蠣崎弘の透き通ったハイトーンボーカルも相まってかなり印象に残る。更に、Bメロからサビ手前までのアレンジは今聴いてもオオッと思わされる切れ味でカッコいいの一言。

「蠣崎弘+”r”-project」はその後、ミニアルバム1枚、シングル1枚をリリースしたが認知度は上がらず蠣崎弘はソロ活動に入り、事実上、活動はそれのみでストップしてしまった。

大成はしなくとも、職人的でテクニカルなロックサウンドを聴かせてくれそうだっただけに、勿体ないユニットだった。

アニメソングの進化という枠組みではなく、ギタリスト武沢豊の魅力溢れる逸品「邪魔はさせない」、強くお勧めしたい。

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